virgilの日記

映画、シリーズの感想多めです。

「ブルックリン」

f:id:virgiltx:20211210141209j:plain

このスチール、マットペインティング感強い

シアーシャ・ローナン主演「ブルックリン」を観る。ニック・ホーンビィ原作。「MADMEN」の主人公の後妻役の人とか、ドーナル・グリーソン、びっくりしたのが、今まで観た中で辛い映画TOP10に余裕で入る「マグダレンの祈り」の主演の人がでていた。顔のインパクト強いのですぐ分かる。しかしドーナル・グリーソンて何度も映画で見てるけど、なんとも掴めない顔というか、独特の風貌だなぁ。

 

あらすじ:1950年頃のアイルランド。主人公が母と姉と離れてアイリッシュ系移民の多いブルックリンへ移り住み、右も左も分からずホームシックに苦しみながらもイタリア系のトニーと出会い、やっと居場所を見つける。しかし故郷で不幸があり、アイルランドに一時的に戻ると、ここでも自分の居場所が用意されていた。どちらを自分Homeにするのか選択を迫られる。

 

f:id:virgiltx:20211210141416j:plain

 

英語が母国語なだけずっとましだろうとはいえ、アイリッシュ移民のコミュニティの支えがあるとはいえ、情報も少ない時代に一人っきりで遠い国に移り住む心細さよ・・。良い出会いがあってから、もっさり感が消えて垢ぬけてたくましくなる様が鮮やか。渡米する船で同室になる女性とのコントラストが、ラストシーンにつながっている展開がいい。

 

自分が年齢的に姉や母に近いのもあって、残されたふたりのほうに感情移入してしまう。故郷を離れる主人公に、「お姉さんはひとりでお母さんの面倒を見ないといけなくなるわね、可哀そう」なんて言葉も浴びせられるが、そもそも聡明な主人公を仕事のない田舎にとどめておくのは忍びないので、姉がつてを頼って妹を渡米させたのだ。もうひとつ理由があるのはのちに分かるのだけど・・。


次女の気楽さもあるかもしれないけど、ふたりを置いていくって、20代の若い頃でないとできないことなんでは・・というのが一番残ったところ。若ければ、自分の将来を考えることに集中できる。逆に言うと、自分のことを思い返しても、若い頃は自分中心に動くことができる、あるいは許されると思える、のだ。誰が悪いわけでもなく、人の宿命の哀しさを想ってしまうと同時に、主人公が自分で居場所を見つけ、アメリカで揉まれていくたくましさを身に着けたことを嬉しくなる。

ここからはネタバレかもしれないので畳みます。

 

 

 

最後まで違和感あったのだけど、一時帰国する前にトニーを選ぶ展開は、ちょっと意外だった。トニー一家の安定感(末の弟がナイス)も魅力だったのかな。家族もいない土地で生きていくのにちょうどよい伴侶として彼を選んだとも受け取れる。でも、おそらく主人公は将来会計士になり、トニーの家族とは職業階級的に差がでてくるんじゃないか・・と想像したり。
ブルックリンに戻ることを決意させたあのクソ意地悪ばあさんの一言の衝撃(そうだった!田舎ってこうだった!の気づき)が大きかったのは描かれているけど、「ここにはいられない」のほうが強くて、トニーの元に戻りたい描写はなかった気がする(手紙も全部読んでなかったし)それでもブルックリンに戻ったのは、先を考えたうえでの総合的判断であり、ラストシーンでひしっと抱き合うシーンで終わるのは、ここにベースを築くぞ、という決意なんだろうな。2人の男性が現れて好意を抱きつつも、恋愛よりも、自分の足でどう生きていくかに彼女の関心があることが軸になっているのがとても良かった。シアーシャ・ローナンが演じると余計にそう見えるのもある!