virgilの日記

映画、シリーズの感想多めです。

「産婦人科医アダムの赤裸々日記」「シャイニングガール」

産婦人科医アダムの赤裸々日記

皮肉の嵐に大笑いしながら、次の瞬間にはあまりの辛さに胸が痛くなる…。辛い現実を笑い飛ばすイングリッシュ製作品の見本のようなドラマだ。2000年代にNHSで産婦人科医をしていたアダム・ケイによる医療ノンフィンクションのドラマ化(邦題「すこし痛みますよ〜ジュニアドクターの赤裸々すぎる日記」)。

 

NHSはイギリスの医療システムで、基本的に治療費は無料なため、深刻度に関わらず人が押し寄せていつも混雑している。医師の人手は足りず、給料も低い3K(死語)な職場環境で瀕死の状態で勤務する人々。アメリカのドラマなら、そんな中でもやりがいや仲間同士の絆を描くところだが、イングリッシュなのでそんなことは期待してはいけない。極端な描写ではあるだろうけど、相手に不満をぶつけまくるし(穏やかに、かつ鋭い)、暖かいやりとりはほぼ皆無。そんな過酷すぎる日々を送る医師たちを見ているのは辛いはずなのに、視聴者を爆笑させるのがこのドラマのすごいところだ。わははは!となった後に、ずーんと突き落とされる(泣いた)。上の写真ではベン・ウィショーがカメラ目線だが、カメラに向かって話すシーンもしばしば。辛い現実を客観視することでどうにか乗り切るしかないという諦観…。

 

主人公は同僚たちから嫌われているという設定もイングリッシュならではな気がする。プライベートでは恋人や母親(嫌味な上流階級)との関係に悩み、ゲイであることを職場で隠し、余裕がないので態度が悪い。あと1話しかないけど、どうまとめるのかな…と思いながら観ていたが、主人公はいい人になりました、めでたしめでたし、ではなく、ほんのりと改善していくのも、あくまでリアルだった。ああ見ごたえのあるドラマを久々に観た満足感。ベン・ウィショーってあまり意識して観たことがなかったけど、雨に濡れた捨て犬みたいな見た目なのに、めちゃくちゃ魅力的で、人気があるのがようやく分かったなぁ。

 

シャイニングガール

刺傷事件のサバイバーである主人公が、過去何十年にも渡って同じ犯人による犠牲者がいることに気づく。でも時系列がおかしい…。割と最初の段階でこれは普通の事件じゃないことが分かる。タイムリープだとすぐに気づくものの、展開を正しく追うのが難しい。すごく面白いのだけど、一気見していないので、余計にわけわからんくなってしまった。日本語でネタバレを検索してみたけど、あまり見つからず。Apple TV+だから観てる人少ないのかな。原作があり、かなりいろんな要素が絡んでてタグの多い作品みたいだ。原題はShining Girlsで複数形なのに、邦題は単数形なのはいかがなものか、という評を読んだが、ラジウム以外に何が輝いてたのかも分からないていたらく…。なので、俳優についてしか書くことがない。

 

最終的には、エリザベス・モス主演であること自体がネタバレという感じも。いつも同じような役柄なので、フェミニズム寄りのストーリーなのだな、と予想しながら観ることになる。

犯人役のジェイミー・ベルがいい。子役出身の俳優ってマッチョとか極端な役を選んで、自分についたイメージを払拭しようとする傾向あるけど、彼はどんな役をやってもちゃんとハマるし、今回もキモさ全開で、不幸な出自を持つルサンチマンの固まりみたいな役がぴったりだった。

主人公と一緒に捜査する記者を演じるワグネル・モウラも良かった。もっと登場シーンが多かったらなぁ。