virgilの日記

映画、シリーズの感想多めです。

「最後の決闘裁判」「ゲティ家の身代金」「ナイブズ・アウト」

リドリー・スコットクリストファー・プラマーの流れで3本。

最後の決闘裁判

リドリー・スコット監督、マット・デイモン&ベンアフ脚本出演の本作は、アメリカでも日本でもコケたらしいけど(宣伝不足?中世ものだから?)、観た後誰かと話したくなる映画だった。また、ジェンダー問題を中世に起きた史実を通して描くことで、より強く意識させられる。決闘は迫力があるものの、見終わる頃には、勝手にやってろって気分に。

 

カルージュ(デイモン)の妻マルグリット(ジョディ・カマー)が、ル・グリ(アダム・ドライバー)にレイプされたと訴え、決闘で決着をつけた史実を基に、3人の視点で語られる3章からなる物語。カルージュ、ル・グリ、マルグリットの順で同じ出来事を見ることになるのだが、それぞれの感じ方がまったく違うので飽きさせない。特に最後のマルグリットの章は、これが「事実」だ、と示唆するような演出がある。史実を基にしているが、なんせ14世紀なのと、当時は女性の主張が書面で残されることはなかったので、事実は分からない。まあなんと書き残されたところで事実は分かりっこないのだが、映画としてはマルグリットが本当のことを言っている、と意図的に設定している。


14世紀フランスの人々の価値観が今と違うのは当たり前だが、分かっていてもうんざりする。女性はあくまで男性の「財産」であり、嫁がせる娘は土地や現金などと同じ扱いだし、決闘するのは男性の財産である妻を暴行したからだ(メンツ問題)。妻の無念を晴らすというよりも、「俺の妻」を汚しやがって!許さん!てこと。当時はそれが普通だったのだろうけど、今もそういうメンタリティって残っている。中世から進歩してないのかよ!と思わせるところがこの時代設定でこの問題を扱うポイントだ。

 

この映画にはレイプシーンがある。これを見て「13の理由」のあの長いシーンを思い出さずにいられなかった。ル・グリの視点では、マルグリットがあまり抵抗していないように描かれる。身勝手な思い込みでもあるが、実際に、苦痛を回避しようとして放心状態になり、身動きができないこともある。「13の理由」で、必ずしも叫んだり暴れたりすることができない現実が描かれたのは功績だと思う。ル・グリは自分ではマルグリットへの「愛」ゆえにやったことだと信じているので、さらに質が悪い。

 

こちらも、観たあとにBLACKHOLEで批評を聞くとさらに楽しいのでぜひ。キャー勉強になる!

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視点を分けた構成が大好物なのだけど、「アフェア 情事の行方」も、男女それぞれの視点をABパートで分けて同じシーンが描かれる。特に男女の問題は、こんなにも違うのかと驚くのでおすすめ…。ながらくWOWOWが独占していたせいかあまり話題になってないけど、今はアマプラでも観られるよ。

 


ゲティ家の身代金

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権力者は犬がお好き、だよね。多分、忠実だから。

リドスコつながりでこちらも観てみた。孫が誘拐されたからっていちいち身代金払ってたら破産しちまうよ、とのたまう大富豪のじいさんが渋々払うことにするのは、自分の身の危険を察知から、ってとこに納得。安定の面白さ。野性味あふれる犯人グループのひとりを演じたロマン・デュリスが良かった。

 

ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密

クリストファー・プラマーが大富豪じいさんを演じるつながりでこちらも。ダニエル・クレイグがおっちょこちょいな?ホームズ的探偵を演じているが、笑いがドすべりしてるようにしか見えず。顔が硬いんだよなぁ。ここは笑うところですよ、と刑事が説明するようなセリフを言うので、なんなんだこれは…だった。アンソニーホロヴィッツの小説でも、警察が私立探偵の力を借りているけど、実際に欧米ではそんなことあるのかな。日本では絶対にないだろうな、少なくとも公には。警察ではないけど、山の遭難者捜索では、切羽詰まったら霊能者に相談することはあるらしい。