virgilの日記

映画、シリーズの感想多めです。

Rubloサイズガイド

 12/13の発売初日にオーダーして到着したのは1/13。オーダーが殺到したのと、年始の羽田の事故で遅延とも書かれてたので、落ち着いたらもっと早く到着するはず。日本でももっと早く届いた人もいるようなので、割と時間差があったかも。

 ボトムスはサイズが心配だったのでショートパンツしか買わなかったけど、Tシャツはサイズの参考になるかと。すべて平置きで採寸。採寸方法は下の写真と同じです。

着丈 (Length):襟の縁から採寸(緑の矢印どおり)

身幅 (Width)

 

もも幅 (Thigh)

股下 (Inseam)

エスト (Waist)

 

Practice Shirt

S

着丈 (Length) : 70  身幅 (Width): 50

オーガニックコットン100%で中厚地くらいの厚さ。薄くもなく厚くもなく、ちょうどよい。ユニセックスなので着丈が長いのを考えると、158cmの私だとSかXSかな。南米はいつか行ってみたいのと、色でこれを選んだけど、デザイン的には線が太いアフリカが一番好きなので、今度はアフリカ買おう。本人もアフリカを着てることが多い印象だけど、気のせいかな。ヨーロッパばかり着てる!とか、偏りがないように気を付けていて、アフリカが一番ニュートラルだから?(気のせい)。アジアのイエローもかわいい。

Match ShirtのSと比べるとけっこう長め。

Nike CourtのスマイルTと比べてみた。サイズはM(ユニセックスなのは確実で、多分アジアン(日本?)サイズ)。

 

Match Shirt

着丈 (Length) : 65  身幅 (Width): 50

着丈 (Length) : 67  身幅 (Width): 52

こちらはつるつる、のびのびの水着のような素材。でもてかてかはしてない。テニスウェアを着たことないんだけど、こういう素材は主流なのかな? 白でも意外に透けにくい。SとMの比較はこちら。

 

Match Shorts

M

もも幅 (Thigh) : 30  股下 (Inseam) : 14  ウエスト (Waist) : 36

Match Shirtと同素材でよく伸びて動きやすそう。写真で見る通りの真っ赤で素敵。股下は写真で見るより短い印象。

試合で着てるのを見てて思ったとおり、サイドのスリットはけっこう深め。ひらひら。

エストはヒモなのでかなり調節できそう。

 

Black Casual Zipper Jacket

S

これはボリューム感もあるので採寸しても分かりづらそうだから、ざっくりとしか説明できない…。

私は158cmで普段はMサイズを着用。ジッパー閉めて裾を伸ばすとお尻が隠れる長さ。Tシャツとトレーナーの上から着ても余裕あり。ユニセックスなので腕が長めだけど、幅広のゴムがついてるのでちゃんと手は出る。もっとざっくり着るためにMでも良かったかもだけど、差が分からない。ジッパーを上まで閉めても顎につかないのがいい。適度な薄さで軽くて防風になる便利そうなジャケット。裾と袖口の幅広ゴムのおかげでダサいスポーツウェアに見えない。ジャケットが一番お気に入りかも?現在在庫はXSのみ。

Rubloのカラーパレットに合わせて、夏以外に着るときのコーディネートを考えてみたw

今回は計170ユーロプラス送料31ユーロ、関税1700円だった。第2弾が待ち遠しい!

上海マスターズ 2023 観戦記

 今年7月のBåstad(ボースタッド)に引き続き、4年ぶりに開催された上海マスターズを観戦しました。上海に滞在したのは10/2~10/10(11日1am)で、観戦したのは予選2日目の10/3から10/10。10/9までの予定が、思いがけず1日延長することになり…。ツイッターのファン仲間たちに会えたり、現地で偶然知り合いになった人々に助けられたりで、にぎやかな8日間だった。

 コロナ明け初の開催なので、2019年までの情報は当てにならず、中国渡航のあれこれも含めて何もかもが「行ってみないと分からない」手探り状態。以下は2023年度の情報なのでご了承ください。

 値段は元表記です。1元=22円。

 

現地に行くまでの経緯

 ボースタッドは大変楽しかったものの、250なので観戦できた選手は少なかった。そしてまだダブルスを見ていない(Rublanov)。上海は一番近くて時差も1時間、フライト代も安い身近なマスターズなのでずっと心の隅にはいたものの、観光ビザがいる、日本のクレカは使えないので支払いアプリが必須、など中国渡航独特の事前準備が大量にあり、なかなか重い腰が上がらなかった。結局決め手は、こんな近くにみんな来るのにスクリーンで悶々としながら見るのに耐えられないと思ったから。またもや1カ月を切ったギリギリになってから準備開始。

 観光ビザはオンライン申請から2度の中国ビザ申請サービスセンター通いを含めて10日ほどで完了。申請の予約はマメにチェックしていると空きが見つかった。アリペイやWeChat、通信関係はまた後ほど。

 ちなみに私は中国に行くのは初めて。好奇心はあったものの、人生で中国に行く日がくるとは正直思ってなかった(テニス愛のなせるわざ)。妹は独学で中国語を勉強していたことがあり旅行にも行ったので聞くと、普通に親切だよ、と言われるも、いくら上海でも街中ではあまり英語通じないだろうし、どうなることやらと思いながら出発。

 

アクセス

フライト

 東京ー上海間は様々な航空会社が飛んでるので選択肢は多いけど、直行便で安いPeachを選んだ(往復6万円台)。大会前半をメインにするのは決まっていて、一番安い日を選んだらこの日程に。上海マスターズも前週の北京も国慶節にひっかけて開催されていて、上海マスターズは国慶節の後半が1週目と重なる。旅程を少しでもずらすと10万円を超えたので、フライト代が安かったのは人の流れと逆行する日程だったからだと思う。行きも帰りも乗客は20人以下で私以外おそらくみんな中国人だった。来年も似たような日程で開催されるので、これは覚えておいてもいいかも。

 Peachは羽田発なのはいいとして、2:45am発5am浦東空港着という過酷な時間帯。体力的になかなか厳しいけれど、到着日しかフル観光はできないので、早朝到着後、夕方まで外灘や田子坊などを散策した(豫園は人混みがすごくて断念)。帰りは1am発なので、会場で観戦した後、空港に直行する予定。ナイトセッションを見たい場合はちょっと厳しい時間かもしれない。

 Peachにして正解だったのは、滞在を1日延長することになったとき、差額20円で翌日便に変更できたこと。これは本当に助かった…。

何もかもがデカい。連休中(ゴールデンウィークと呼ばれていた)なので、中国各地から観光客がたくさん来ている様子。

 

古い町並みを保存して観光地になっている田子坊。上海は開発が進んでいてこうした建物はほとんど残っていないとか。しかしあまりいい店がないのが残念。もっとオシャレな店が増えたらかなり魅力的な観光名所になるはず。

 

地下鉄

 上海の地下鉄は大変分かりやすく、本数も多い。東京の地下鉄に乗るのと同じ感覚で、車内はきれいだし人混みもそれほどではないのでかなり使いやすい。そしてタクシーやバスと同様に、運賃がとても安い。浦東空港から上海体育館まで1時間乗って7元だった。

 会場の最寄り駅は5号線の顓橋。ここからタクシーで10分~15分かかる。旗忠テニスセンターは上海中心部から車で1時間以上かかる郊外にあり、周りは工場や会社しかない。徒歩で行ける場所に小売店はないので、飲食物は会場内で買うか、事前に用意する(持ち込みOK)。

※この路線図は実際に上海で使われてる漢字と表記が異なります

 上海体育館駅のホテルに宿泊したので、かかった料金と時間は:上海体育館→顓橋27分、4元。

 

顓橋駅の改札を出たら左手の2号口へ。ここからタクシーや路線バスに乗る。

 

乗り換えの莘庄駅。少し大きめの駅で、駅ナカにファミマ(全家)あり。中国の地下鉄は改札の前に荷物検査がある。小さな肩掛けなどは開けて見せるだけだが、それ以外は必ず機械に通す。

 

地下鉄にどうやって乗るか、それが問題だ…と行く前は心配だったけど、アリペイのQRコードをかざしてスイスイ。切符を買うことはなかった。発券機が並んでいるけど誰も使ってない。

 

 地下鉄で注意なのは終電が早いこと(駅や平日・週末で変わる)。例えば、会場から21:30のシャトルバスで上海体育館に向かうと、渋滞具合にもよるが到着するのは22:30くらいになる。そこから地下鉄でほかの駅に向かおうとすると、平日は路線によっては22:37が終電だったりする。そもそもナイトセッション2試合目が終わってから乗るともっと遅くなるので、上海体育館からはどこに帰るにもタクシーに乗ることになる。週末は0時過ぎまであるし、路線バスの最終時間は分からないけれど、基本タクシーに乗るのが前提と考えたほうがいいかも。

 

地下鉄車内。車両間に扉がなくて、ずっと奥まで見通せる。みんな携帯見てるのはどこも同じ。

 

タクシー

 上海のタクシーは大変安い。アリペイのTransportからTaxiか、ミニプログラムのDiDiを選んで行き先を入力する(英語でも漢字でもOK)。実際使ったときのスクショはないけど、こんな感じで、日本の配車アプリとほぼ同じ。手配後、車のナンバーが表示されるので、オーダーした場所で待ちながら探す。顓橋駅から会場までの値段は17~25元とバラつきがあった。所要時間は10~15分ほど。

 

 顓橋駅周辺は車窓を見てもかなり郊外だと思うけど、いつ手配しても5分以内に飛んでくる。乗り込むと中国語で何か聞かれたり聞かれなかったり。自分の携帯番号の下4ケタを伝えるとどこかで読んだので、メモに書いて見せると、よし!みたいなジェスチャーをされたり、無反応だったり。

 顓橋駅の駅前は人も交通量も少ないので必ず乗ることができるけど、会場前から乗るときは注意。6車線の広い道路で交通規制されているため、ゲートの真ん前で捕まえるのは難しい。中国人の友人と一緒にいるときに1度、自分1人で乗ろうとしたときも1度、ドライバーと会えずにキャンセルになった(アリペイ上で自動的に返金される)。道路のどちら側にいるのかも重要。特に夜暗い場合、車を探すのは大変なので、1ブロック歩いて離れた場所に移動してから手配するほうが無難かも。

 最終日、夜9時すぎに会場から直接空港に向かう際、どうやって行くか検討した結果、タクシーにした。調べると空港シャトルバスが莘庄駅から出ているようだったが、大きめの駅なので乗り場が分からずに逃すかもしれないのと、地下鉄に1時間半以上乗る気力がなかったからだ。下の写真は百度地図での検索。

 会場から高速に乗って浦東空港まで1時間かからなかった。支払い記録をみると、120元。実は空港に着いてタクシーを降りたあと、ドライバーのおっちゃんが追いかけてきた。QRコードを見せながら何か必死に訴えている。全然分からず翻訳アプリを使うと、このQRコードを読んで支払いをしろ、とのこと。おそらく高速代金。WeChatのスキャンを使ってなんとか支払いを済ませた。合計で150元ほど。

 

バス

 まずはシャトルバス。上海体育館のホテルに泊まることにしたのは、会場から夜に運行するシャトルバスの終着点だったのが大きい。実際は2回くらいしか乗らなかったけど。

 行きは莘庄駅発が11時。私は練習を見るためにいつも11時前には到着していたので、一度も乗らなかった。帰りのバスはゲートを出て右に少し歩くと待機している。頻度は正確には分からないけど、行くといつもバスが連なっていて、10分もしないうちに出発した。車内が混んでいて1本流しても、次のバスで座って待てる。

 帰りは16時以降は莘庄駅行きで、21:30以降は上海体育館駅周辺への直行便。この夜便は途中莘庄か顓橋に停まる便もあったはず。面倒だけど実は地下鉄に乗り換えたほうが早く着く。料金の2元は、アリペイのQRコードで払ったときもあれば、払わずに乗っても何も言われなかったり。その辺は適当かも。上海体育館行きは、乗車前に10元でチケットを買う

シャトルバス乗り場。看板などはないが、乗り場に係員がいる。

 

 次に路線バス。顓橋に着いてまだ時間が早かったので、試しに路線バスに乗ってみた。駅前の道路の反対側にあるバス停から乗る。漢字入力ができない文字なので、路線名と降りるバス停は写真でご確認を。今検索したら顓橋から約40分、バス停降りてから徒歩8分だった。もっと早く着いた感覚。料金は2元(現金(コイン)使えます)。ローカルバス好きな方はぜひ…。車内はキレイで電光掲示板もあるので分かりやすい。ここでバスを待ってるときに、tennis?と声をかけられて知り合った中国人の男の子と一緒にバスに乗って会場に向かうことに。

 初日の観光でもあまりの暑さに路線バスに乗ったけど、地下鉄と同じくアリペイのQRコードでスイスイ。百度地図を見ながらGPSを使って快適に街歩きができる。漢字は見慣れてるので発音はまったく分からなくてもどうにかなる。以前台湾に行ったときは全然地名や通りの名前を覚えられなかったけど、使用する漢字が上海のほうがシンプルなんだろうか。

 

宿泊

 上海体育館駅の7番出口を出て徒歩1分の錦江都城酒店に7泊した(Trip.comの漢字表記は恐らく旧名?)。こちらのブログを読んで知ったホテル。一番安い部屋でも十分広くて電源もたくさんあるし、通常のビジネスホテルにある設備はすべてある。特に水回りが広い。掃除や備品の補充も完璧。水のボトルとお茶・コーヒーは毎日補充されていた。朝食ブッフェはおいしいとは言えないけど、徐々にまずくないものを把握して同じものを食べていた。ヨーグルトやチーズなどの乳製品は食べられないまずさ。すぐ近くにコンビニや朝食を確保できる店がないので、滞在が長かったのもあり、朝食付きにして良かった。コンビニとマクドナルドは近くにあるものの、広くて渡りにくい道路をの向こう側にあり、このあたりは1ブロックが大きいせいもあって「近く」はない印象。ちなみに夜10時頃ホテルに帰っても、近所に飲食店はない。上海体育館駅の別出口には小さなショッピングセンターがあり、地下は飲食店街だが、9時半にはほぼ閉店していた。中国語が分かる人がホテル近くに小さなテイクアウトがメインの店を見つけてくれたので助かった(おいしかった)。

 

 最後に急遽1泊延長して滞在したのは、莘庄駅から徒歩8分の如家酒店上海市内にたくさんあるチェーンホテルのひとつ。日本の宿泊サイトでは見つからなかったので、公式?のリンク貼ってます。日本でホテルを探している最中、会場から近いエリアのほうがいいのではとこのあたりも検討したけれど、ローカルエリアなので様子が分からず、候補から外した。ツインで5000円しないくらい。一見普通のビジネスホテルだが、鍵もベッドも安っぽく、エレベーター脇に灰皿があるので禁煙部屋もタバコ臭いのであまりおすすめはできない。まあまあ清潔ではあったけど。チェックインに外国人の私だけえらい時間がかかったのはちょっとヒヤヒヤした。現地で出会った中国人の若者3人組から一緒においで、と誘われたから泊ることができたけど、初中国でひとりで宿泊するにはハードルが高い宿だったと思う。彼らは翌日ホテルを変えたので、やはり気に入らなかったみたい。中国に慣れてる、あるいはあまり気にしない人には安くて近くていいかもしれない。ここから会場まではタクシーで20分くらい?

ホテル周辺。莘庄駅は郊外だが少し大きめの駅で、夜遅くても開いている飲食店がたくさんあるし、スタバが入っている小さいショッピングモールもあり。もう少しマシなホテルがあれば、この辺に滞在したい。ただ、宿泊予約サイトで部屋を見ても実際と違ったりするから難しい。ファン仲間の中国人の子は顓橋のホテルに滞在して、レンタル自転車で会場に通っていたのでどこに泊ったか教えてもらったけど、最悪だったらしいのでここでは紹介できない。

朝9時頃、ホテル周辺をパトロール。八百屋から美容院、宝石店まですでに開店してるので驚いた。人出も多い。朝型社会なんだろうか。上海は日本の3大コンビニ、セブンイレブン、ファミマ、ローソンがたくさんあるが、中国のコンビニ「良友(Buddies)」が気になってたのに入りそびれた。そして写真も撮り忘れた。

部屋の写真撮り忘れたので、ロビーにいた猫でごまかす。

 

チケット

 ここは現地に行ってみて初めて分かったことが多い。これから私が経験したごたごたを報告するけど、あくまで自力でチケットを手配したい人向けであって、こんな面倒なことをしなくてもいい方法がある。それはご存じチャイナエイトさんにチケット手配してもらうこと。YouTubeにも出演してるスタッフの方が現地に来ていたらしく、当日依頼してもOKで実に便利そうだった(手数料は何%かかかる)。これから書くことも、私の記憶と経験によるもので、間違っていることもあるかもしれない。そして2024年以降はどうなるか分からないので、ご参考まで…。

 

日本での事前準備

 私が事前に用意したのは、公式サイトにリンクされていたJuss Sports(英語版サイト)から購入できるチケット。当初は中国語版のアプリでしか購入できなかったので、外国人はどうするんだ!の声に反応したのか、だいぶ遅れて発表された(実際、現地に外国人は少なかった。それも海外遠征組ともなるとさらに少なそう)。渡航前に購入できて安心できただけでも良しとする。登録後、座席もシートマップから自分で選んで、クレジットカードで決済できた。電子チケットと記載されているが、購入後QRコードが発行されるわけでもなく、現地でどうやって入場するのかまったく不明だった。顔認証システムを採用しているとどこかで知ったが、外国人はどうなるのか? 問い合わせメールをすると、大丈夫!パスポートがあれば入れるよ!とフレンドリーな返信。チャイナエイトで購入した人も同じことを言われたらしく、うーん分からん状態のまま現地入り。

 購入したといっても全日分買ったわけではなく、とりあえず国慶節ウイークでセンターコートが売り切れ間近だった最初の土日までの分などを適当に。現地で買えばいいでしょと思っていたのが甘かった。ちなみに、1週目はパッケージチケットが完売してたのもあって、座席はけっこう埋まっていた。パッケージチケットは英語版サイトでも選べるようになっていたが、私が見たときはすべて完売だった。

 ちなみに、予選の2日間は60元で入場できて、物販で買い物をしたら60元値引きしてくれるので実質タダになるという素敵なサービスあり。予選日も集客する良い作戦。

英語版で購入した画面。

 

現地でチケットを買う

 上海に到着してからアリペイもネット環境もこのうえなく順調で怖いくらいだったので、楽勝モードで意気揚々と予選日2日目の会場へ到着。ただ、この日のチケットは用意していない。英語版サイトでは購入できなかったからだ。でも入口にはチケットオフィスがある。ここで買えるだろう…。以下のやりとりの流れは箇条書きで。

  • ここでは一切チケットを販売していないと判明。予選日のチケットは中国語版の久事体育(Juss Sports)アプリで買うしかない。
  • (お兄さん)WeChat持ってる? 僕が全部操作するので任せて。
  • (お兄さん)あ…中国の携帯電話番号が必要。え? 持ってない? 誰かその辺の人を捕まえて、番号を借りて。SMSを受信して承認してもらうだけだから。誰か見つけてくれたら、あとは僕がやってあげる。
  • マジか…。中国人のファン仲間に一応連絡できるけど、今日は外出しててすぐに返信できないかもと言われてるし、どうしよう(きょろきょろ)。
  • 招待されたけどどうやって入場するの分からないという白人女性が後ろに並んでいる。彼女におずおずと頼むと、二つ返事でいいわよ、と快諾(面倒よね、分かるわ、な顔)。女神!
  • 無事予選日のチケット購入完了。

 そして本選2日目、この日のチケットも事前購入していない。英語版サイトから買おうとしたら、完売の文字。焦ってまた相談に行く。スタッフの女性が中国語版で確認すると、まだ座席はある。なぜか英語版と食い違う。このアプリおかしいんだよね…と苦笑。周りのスタッフがわらわらと集まってくる。中国語版で購入することになったけど、初日はスタッフのお兄さん任せで自分でやり方が分からなかったので、今度は一緒に買い方を確認した。なぜか時間がかかったけどなんとか購入完了。握手。スタッフの女性は「諦めなければ必ずできる!」と興奮気味で、周りで見てたスタッフたちも拍手してくれた。

 なんであんなに盛り上がったのか、今思うと不思議だけど、そういう空気だった。チケットオフィスや顔認証の手続きを行う場所、インフォメーションや物販にいる英語でコミュニケーションをとれる若いスタッフたちは皆親切で、外国人ならではの問題があると、申し訳ないという様子でめちゃくちゃ一生懸命対応してくれる。

 今思うと、中国語版にアクセスできたなら、入場券だけ買えば良かった…(1回戦はセンターコートで見る予定がなかったから)。この後は中国語版サイトから自分でほいほい買えるようになった。ただ、私が購入するたびにあの女神さまにSMSが送信されていたのかもしれない…。

中国語版の久事体育アプリ。

 

これは来年以降も同じシステムかもなのでまとめておく。英語版は改善してほしいけど。

  • 現地でのチケット直接販売はなし
  • 販売は久事体育(Juss Sports)アプリ経由のみ
  • 中国語版(久事体育)から購入するには、中国の携帯番号が必要
  • 英語版(Juss Sports)で買えるのはセンターコートのチケットのみ(予選の入場券、本選の入場券、3号館チケットは購入不可)

 外国人が中国語版から購入する方法は、知人から借りる、電話番号付きSIMを使う、だろうか。

 で、WeChatでの久事体育アプリの使い方。検索して久事体育Appに「・・・」をクリックしてスターを付けたあと、チャット画面の検索入力バーをすーっと下にドラッグすると、スターを付けたり最近使用したアプリの一覧が現れる。

 

 一応アリペイも。多分アリペイからも買えると思うけど未確認。アリペイのトップ画面で「久事体育」と検索→開いたら右上の星印をクリック→トップ画面のMy Mini-Programを開く→My Favoritesに表示されるので、いつでもここからアクセスできる。アリペイとWeChatはライバル関係にあるらしいけど、現地の人はいつもWeChatを使ってる気がするなぁ。

 

チケットの種類とアクセス
  • 予選の入場券:すべてのコート(3号館は使われてなかった?)
  • 入場券:練習コートと2号館のみ
  • センターコート(昼夜入替制。指定席):3号館以外のすべてのコート
  • 3号館コート(指定席):センターコート以外のすべてのコート
  • VIP席

※チャイナエイトのサイトには2号館チケットがあると記載があるけどこちらは未確認。

 この3号館コートというのがクセもの。というのは、観たい試合が3号館で行われる場合、すでにセンターコートのチケットを持っていても、別途購入が必要になる。スケジュールが発表されるのが前日。雨予報が出ていなければ試合が組まれ、当日朝8:30に発売される(発売時間は変わることもあり)。確か3号館が使用されるのは3回戦までだったかな。ルブレフはシード上位選手なのに3号館に組まれることが多く、私が観た3試合はすべて3号館だった。ファンの間では、3号館のチケットを売るためではないか疑惑も。指定席のため、最初はいい席が買えるかとどきどきしてたが、販売開始時間に買えば余裕で購入できた。席は移動できるので気にしなくてよし。

 事情が分からなかったし、スケジュールが出る前日まで観たい試合がどこで行われるか分からないので仕方ないが、振り返るとこうしておけばよかったなと思う点がいくつかある。観たい選手によって戦略は変わるけど私の場合。

  • 1回戦はbyeなのでセンターコートを買わなくてもよかったかもしれない。でも1週目の土日までは混んでいるので、値段も安いしほかの選手で観たい試合があったときのために買っておくのもよい。
  • 1~2回戦あたりはまだ選手もたくさんいるので、入場券だけでも練習や試合を楽しめる(練習コートで見たい試合をやるかも)。
  • 2週目以降は当日でもセンターコートは買える。3号館はセンターコートに次いで注目の試合が組まれるためここがメインになる可能性もあるから、前日にスケジュールが出てから決めても良かった。準決勝以降は完売している可能性あり。2階席(VIP席以外のすべての席)はどこから見ても遠いとも言えるし、割と見やすいとも言えるので、微妙なところ。
  • VIP席も当日購入できる可能性が高い。2回戦なら1050元なので、どうしても近くで見たい、試合後にサインが欲しい場合は奮発する価値あり。

 

会場内

入場方法

 来るまでずっと謎だった、外国人はどうやって入場するのか問題。結論から言うと、「パスポートがあれば入れる」はその通りだった。ゲートに着くと顔認証の機械が並んでいるが、私たち外国人は左のほうに案内され、下の写真の看板を通り過ぎ、白いテントに向かう。ここでパスポートを見せて、顔認証システムに顔データを読み取らせる。ここでやることはそれだけ。センターコートと3号館に入る前にゲートがあるので、顔認証システムに顔を見せると、チケットを購入していれば名前が表示されてゲートが開くし、購入していなければエラーになって通過できない。つまり、白いテントの下でパスポート番号と顔データを結び付けて、各コートのゲートではチケット購入時に入力したパスポート番号と顔データを照合するのだ。顔パスで自由に出入りができるので、これはとても楽でよい。

ゲートを通過すると、今度は荷物検査。やり方は空港の保安検査と同じ。

 

ちなみに、荷物検査エリアの右奥に大きな荷物を預かってくれる場所もあり。無料。係員が常駐していて、途中でスーツケースの中の物を取りに行くこともできる。帰りは会場から空港に直行したので助かった。

 

会場MAP

2番ゲートが入り口。路線バスで来たときに4,5を通ったが、一般客は入れなかった。



センターコート

初めてセンターコートに入った印象は、見やすい!だった。写真は初日の1試合目。すごい歓声。MCも「初戦でこの盛り上がりです!」とあおってたけど、本当に活気があった。この写真はA+席で実際に見た感じかなり近いと思う。遠いは遠いけど、ひな壇状のすり鉢型ではなく、VIP席の上のガラス張りの席(一般販売してない)の分2階席が高くなるどんぶり型なので、それほど遠く感じないのかもしれない。

これはS席の一番前だったか。この辺ならまあまあかな。ズームしてるので実際はもっと遠い。S席に限らないけど、前に誰かが座っていると頭などで見えないこともあり。私は特にひとりで見るときにぎっしり埋まってる中で観戦するのが好きじゃないので、どっか空いてる席に移動することも…。ちょっと上のほうの席でも、空いてるほうが気楽に見れて良かったりする。

雨で屋根が閉まると天上が綺麗。まあ予想してたはいえ、センターコートにいる時間は少なかった。

センターコート内の通路。ゲートは2か所あり、各入口が円形状に並んでいる。飲食ブースはLAVAZZAやハイネケンなど、後述するフードコートに入ってる店と同じ。昼夜入れ替え制なので、ナイトセッション前には完全に追い出される(めちゃ時間がかかる)。

 

3号館

 センターコート近くに位置するこの3号館は、敷地内の奥に大きな2号館があるにも関わらず、センターコートに次いで注目の試合が組まれる屋根なしコート。そして別途チケットが必要。指定席で、ゲートは2か所あり、自分の席と反対側の入り口からは入ることができないので注意。プレイする選手にもよるだろうけど、ぎっしり埋まることはないので、指定席だが適当に移動できる。ちなみに、3号館の練習は当日のチケットがないと見ることはできなかった。

 追記:雨が降って1試合目の途中までしか行われなかった日は、その日に全額払い戻しされた。WeChatで返金確認がすぐにできて便利。

練習。近いし、見てるひとも少なめで環境良し。

 

チチパスのダブルスは盛況だった。

 

ルブレフは2回戦と3回戦、ダブルスも全部この3号館での観戦になった。観るほうとしては近いので嬉しいからいいんだけど。試合後のサインも、練習コートほどの地獄にはならず、ちょうどいい。

今回は決勝まで勝ち上がり、どちらが勝ってもおかしくない試合展開だったが、するりと優勝をさらわれた。

 

上海のメインイベントはルブラノフ。このダブルスが9日夜の予定だったが、相手の棄権により不戦勝。その夜に帰国するはずだったが、翌日の試合を見るために急遽滞在を1日延長することになった。でも、画面で見てても聞こえない2人の「ダバイ、ダバイ」のひそひそ声が聞こえただけでも来た甲斐があったー。

 

こういうの見たかった。

 

2号館

 敷地内のいっちばん奥にどっかりと鎮座しているのに、入場券だけで入れるせいか、あまり大きな試合は行われない、もったいないコート。広くて座席数も多い。来てみると、とても見やすいし居心地がいい。なぜこっちにゲートをつけて第2のコートにしなかったのか謎。

 

センターコートから続くメイン通路の脇には練習コートが並び、その先にラスボスのように木々の向こうにそびえる2号館。なのに3番手扱い。階段を上がった高台に建っているので余計に大物感がある。

 

練習コート

 練習コートは計16面。7面は座席があるので本戦の試合も行われる。練習スケジュールはweiboの公式にアップロードされる。1日に数回更新されることもあり、大変ありがたい。

 写真が大量で選べないので、周りの様子が分かりやすい写真を。

植栽できれいに区切られていて分かりやすい。

通路を歩く選手によく遭遇する。こうやって囲まれてる選手もいれば、チームと一緒で黒服なし、そして1人でふら~っと歩いてる選手も。

 

予選日から行くメリットは、たくさんの選手を見られること。初戦敗退したので見といてよかった、なんてこともある。その1、アンディは練習中ずーーーっとコーチとしゃべりながら打ってた。ちなみにおしゃべりな選手ランキングは、1位ユーバンクス(ぶっちぎり)、2位アンディ、3位ハチャノフ(練習見学を基にした私調べ)。アンディはサインはそこそこに、黒服に囲まれて去って行った。

その2、ルーネも意外に初戦敗退。練習は何度か見れたし、サインももらえたけど、セルフィーは、かなりがつがつしないと不可能だった。サーカス団員だったというコーチのラース、ポッドキャストでインタビュー聞いてけっこう好きだったんだよなぁ。まだ若いからか、ファンに囲まれても嬉しそうだった。

初戦敗退といえば、一度も見られず残念だったのはケツマノビッチぐらいかな。ほかの選手はだいたい見ることができた。

 

フェンス越しコートは、出入り口で待機する。ディミトロフも意外に?すごく人気があった。

 

練習コートでも人気選手だと入場制限がかかる。警備員のお兄さんに早く入れろとずーっとがなりたてるおばちゃんも。

ちなみに、練習を見る、サインをもらう、セルフィーをとるなどが難しい選手は、アルカラス、シナー、ルーネ、アンディ、メドベージェフあたりだったかな(1週目の週末までの話)。

 

ひとつだけ片側に屋根ありのコートがある。ちなみに全コート照明付き。練習スケジュールは更新もアップロードされるとはいえ、直前に変更されることもある。そういうときは走って探したり、誰かがweiboに書き込みしてないか、地元の人に検索してもらう。

 

ルブレフ/コーチ VS ハチャノフ/コーチのダブルスも見れた。ベト~。

 

上海の難点?は、ファンのサイン攻めの勢いがすごいこと。他の大会でも似た光景は見るけど、ここでは身の危険を感じるくらい押される。北京に行った人によると、北京も同じらしい。ミーハー(死語)というか無邪気というか…。子供は少なくて、みんな大人。ボースタッドとは真逆でギャップがすごかった。ルブレフはトリノの寒空の下、ホテル前で待つファンにサインをしてたら風邪を悪化させたらしいし、リカバリーなどやることあるのにこれだけの時間を割くのはどうなんだろう、と何度も見てると思ってしまう。もちろんファンにとっては嬉しいことなんだけど。もう全員にサインするのはやめたほうが…

 

こちらは本戦の試合。座席数はもちろん少ないが、人の出入りが激しいので少し待てば入って座れる。

メドベージェフはファン層に男が多いのか、野太い声が飛び交う。怪我しそうな気しかしないので、周りで見るだけにした。

コートに入れなかったのでかろうじて撮った写真。パパにサインもらってる人もいた。激戦になりそうな練習は、早くから席に座って待ったほうがいい。

 

1週目の混雑日はサインせずに逃げるようにコートを去っていたシナー君。2週目はだいぶ人出も落ち着いたので練習後にサインしてたみたい。私は途中で練習を抜けたけど、友達はもらってた。悔しい。

 

お次はルード。ボースタッド、上海、東京と行った大会すべてに出場していたのでずっと見てたんだけど(これ書いてて気づいた)、特別にファンサービスが悪いわけではないが、塩対応気味なのは否めない。ルードは生真面目な人の印象。選手がファンサする光景を大量に見た今となっては、まあ、塩なのも分かるわ…と共感する。ちなみにサイン書くのがゆっくりすぎておもろい。私は苦労してうちわにサインもらったのに、サイン戦争中にいつの間にか紛失……。

 

上海で実際に会って一番ラブリーだったのはラヨビッチ。いい人との評判は本当だった。サインもらう人も数人しかいないのでお話もできたし。やっぱりファンサがいい人はますますファンになることって、あるな。ちなみにファンガールみたいなノリのセルビア選手応援団(中国人の男性3人組)がいて、ジェレに会ったときも見かけた。こういうのも中国っぽいのかも。

 

飲食

 会場周辺には食べ物を買う店はないので、持ち込みで用意するか、会場内で購入するしかない。Shake Shack、Lavazza、ピザっぽい店など、選択肢は5種類ほどしかなかった。値段も高めなので、持ち込みがおすすめ。ペットボトルのドリンクは10元だった。支払いは現金も可

この建物内がフードコート。

ドリンク、バーガー、ポテトのセットで1100元くらい。すぐに出せるようにボックスにセットして用意されてるので、微妙に出来立てではない。お店で食べるよりは美味しくなかったかな。

 

外資系以外のフードはおいしそうに見えなかったので食べてない。

 

LAVAZZAのドリンクやサンドイッチは美味しかった。

 

シナーは上海市街のLAVAZZAの店舗でイベントをやってたみたい。しかし写真がひどい。上海マスターズは公式サイトもSNSも、写真のクオリティが著しく低いけど、あれはなんなんだろう。

 

外のテーブルで食べてもよし。

 

物販

 美食天地の隣に物販専用の建物があり、テニス製品や土産物はここで買える。大会オリジナルグッズはそれなりに種類はあるものの、Tシャツの種類が2つほどしかなくて残念。ここでアクセサリーブランドのスタッフの女性と話し込んでしまい、楽しかった。写真のピアスはForty Loveというブランドで、北米と中国の大会で販売しているとか。日本でも出店したいと言うので、日本でやったら売れるよ!と盛り上がる。例年、日本人のお客さんがたくさん来るけど、今年はめちゃ少ない…と話していた。

 写真のうちわはインフォメーションでアンケートに答えるとくれた。

 支払いは現金も可予選日は、入場券を購入した画面を見せると60元値引きしてくれて実質入場料は無料になるので、お忘れなく。

 

会場内その他

写真撮影スポットもちらほら。

 

スクリーンの下にあるのがインフォメーション。

 

選手が練習コートに向かう際の出入り口。通路はautograph zoneになっていて、毎日限定50名が入ることができる(とインフォメーションで聞いた。20名だったかな)。チケットは速攻なくなるので、開門と同時にダッシュしないと無理だよ、と教えてもらうがゲットできず。人気選手の場合、練習後のコートは地獄絵図となるので、ここでゆっくりサインをもらえたら楽でよい。朝並んでる人がいてなんだろうと思ってたのは、このためだった。ただ、このチケットがなくても入ってる人がいたりして、よくわからなかった。

 

ゲームに参加すると景品がもらえるブースもいくつか。紅牛。

 

最後の夜はなんだか哀しかった(祭りのあと)。

 

 私が個人的に気になったのは、会場内のトイレ。ほとんどが日本でいう和式だった。センターコート内は洋式の割合が少しだけ増える。有明もオリンピック前の改装以前は汚かったらしいし、まあそういうものなのかな…。トイレットペーパーとハンドソープはあるし、頻繁に掃除されている。

 

必須アプリとネット環境

アリペイとWeChat

 日本のクレカは使えないと聞いていたが、大きな商業施設など一部では使用できるらしい。私は一度も使おうとしなかったので検証できなかったけど、使えない前提で潔くアリペイWeChatをインストールしよう。日本のクレカの紐づけなどは最新の情報を探してほしい。私はこちらとかこちらを参考にした。地下鉄バスタクシー、コンビニなどあらゆる決済に利用するだけでなく、前述のとおりチケットの購入やホテル予約、レストラン探しに使うミニプログラムと呼ばれるアプリからそのまま決済できる必須アプリ。

 ただ、日本のクレカ登録はうまくいっているのになぜかエラーが出ることもあるらしい。原因は分からないとか。そこで見つけたのが、こちらの方法。前提として、クレカ紐づけの前に私はTourcardなるものがあるのを知り、まず1000元チャージしていた。Tourcardの詳細はこちらから。上海銀行にプリペイド専用の口座が開設され(つまりデビット)、その口座に国際クレジットカードからお金をチャージして利用するモバイル決済サービス。ただ、このTourcardも機能しないことがあるらしい。先のリンクで紹介されていたのは、Tourcardの口座をアリペイの支払い優先順位1位にしておくと、スムーズに使えるよ、という話。支払いの優先順位って何?と思ったかもしれない。アリペイを使って決済するにはクレカをいくつも登録できるのだが、その中で優先順位をつけることができるのだ。つまり、アリペイやWeChatでうまく決済できない(海外クレカが原因?)場合、Tourcardは上海銀行の口座から引き落とされるので、ここを優先順位トップにしておけばスムーズに決済ができる、と私は解釈している。ここまでやる必要はないかもしれない。日本のクレカも登録したけど、私はこの方法で、すでにTourcardにチャージしてしまった1000元を優先的に使った。そのおかげかは分からないけど、決済エラーは一度も経験しなかった。WeChatもクレカ登録して、こちらも問題なく使えた。Tourcardはチャージするたびに手数料がかかるし、アリペイで日本のクレカでの引き落としが使えるならそのうちなくなるんでは…という気がする。

 そして、これもやる必要があるかは不明だが、登録したクレカ会社に中国に滞在する旨を連絡しておいたほうがいいと聞き、やってみた。オペレーターの人は、最初??って感じだったので、そんなことをする人はあまりいないのかもしれない。

 アリペイとWeChat両方ないとダメ?と質問されたら、入った飲食店がWeChatしか使えない、ということもあるので、両方あったほうが便利、としか言えない。ただ、現地の人はWeChatのほうを頻繁に使っている印象だった。

 ちなみに、現金は思ったよりも使えるみたい。会場内の物販と飲食は現金が使えた。いくらか両替していたので、現金OKな場所で優先的に使った。割り勘するときも現金があると便利(WeChatでも個人間送金はできる)。

 

その他アプリ

weiboは公式ページで練習スケジュールや雨天のスケジュール変更もアナウンスされるので必須。百度地図も必須。翻訳アプリは精度が良いと聞いたBaidu Translateを使った。実際は数回しか使わなかったし、結局分からん、ってことも。地下鉄検索にはMetroManを使った。

 

ネット環境

 私は楽天モバイルなので、ローミングONにするだけで日本にいるときと変わらず使用できた。つながりにくい時や、SNSにビデオをアップロードするときのみ高速データ通信を使ったので、デフォルトの2GBに追加で購入したのは3GBだったかな(500円で1GBずつ購入できる)。公共交通機関に乗るときや支払いのときも、ほぼ待つことなくQRコードが表示できたので、何か不便だったことがあったか思い出そうとしても、何もでてこない。念のため香港SIMも持って行ったけど使わなかった。

 ホテルの部屋ではWiFiを使いたかったので、VPNを使用。中国に強いと聞いたかべネコは一度も落ちることなく快適だった。使い方も簡単。無償プランは14日を過ぎると自動的に解約されるのも楽でいい。ちなみに上海マスターズ会場内にWiFiは飛んでいない

 

感想

 渡航前はとにかく準備に追われて余裕がなく、なんか面倒なことが起こるのでは…その前に、スムーズに入国できるか…から心配だった。蓋を開けてみれば様々な心配は杞憂だったが、渡航前は楽しみというよりも、事なきを得ればよい、と思っていたくらい。だからあまり期待していなかったので、意外に現地の人たちと交流できたのが楽しくて、良い思い出になった。中国は何が起こるか分からなくて怖いという話も聞いていたので警戒しすぎた裏返しとも言える。シャイだったりぶっきらぼうな人もいるけれど、中国人の人懐っこいところと、他人を恐れず気楽に話してくれるところが好きだった。一瞬滞在しただけの印象だけど。こんなことなら中国語をもう少し勉強すればよかった。

 上海マスターズの印象もおおむね良かった。ファンがミーハーすぎるところはちょっと引いたけど、逆に言えばにぎやかで楽しいともいえる。次に行くならなるべく違う大会に行きたいけど、また来ることもあるかもしれない。なんせ一番近いマスターズだから。上海はそもそも馴染みがなく、いろいろ知らないことだらけだったので冒険感があったのも良かった。なんでも”初めて”は楽しい。

 念願のルブラノフも見れたし(ルブレフとハチャノフの練習も2回も見れた)、たくさんの選手にサインをもらったり、一緒に写真をとってもらった。4か月の間2週間も毎日テニス漬けだったので、もうしばらくはいいかな、と思えるくらい大量にテニスに触れられたのは、いいことなのか、そうでもないのか…。行けるときに行っとけ、なので悔いはない。またいつか、全然違う街でテニス観戦できることを願って。

 

以下は雑談(ここをクリック)


カメラ

iPhone 13proに機種変更してこれだけで撮影したけど、やっぱりiPhoneのカメラはイヤだ…と痛感。好きなカメラは持ってるけど単焦点だし、ビデオは全然使えない。ビデオは気になるやつあるけどズームができない。テニス観戦はズームが必須。結局、それなりにキレイにズームで撮れてビデオも使うとなるとコンパクトデジカメになるけど、今のところ欲しくなるような機種がない。画面が大きい、すぐに送信できる、撮っていて目立たない、軽いという理由でiPhoneに落ち着いてしまう。Fujifilmが携帯作ったりしないかなw

現地で出会った中国の人々

 初日の観光では、街中でいろんな人に道を聞いたり質問して話す機会を多く作ったのだけど、ぶっきらぼうな人(中国人のイメージ)、通じないのに中国語で喋り続ける人、無言だけどわざわざ連れて行ってくれる人、こちらが日本人と分かると日本語の単語を話してくれる人(翻訳機を見せた時に日本人だと分かったから)など、様々だが、総じて街中では英語が通じないケースがほとんどだった。

 会場内では英語がけっこう通じるのではと期待していたけど、やはり街中よりは英語を話す人が多かったと思う。少なくとも、話そうとしてくれた。そして、現地の中国人と楽しく話す機会が意外に多かったのは、来る前は想像してなかったので嬉しいサプライズだった。バスを待ってるときに話しかけてきた青年は、英語はあまり話せず、日本語も単語が少し分かるくらいだったが、「日本人と話すの初めて」とのことで、お互い片言でなんとか会話して、別れ際にはスポーツドリンクをくれた(鈴木貴男は素晴らしい選手だって言ってた)。ルブレフの試合中、ファン仲間同士で応援してたら、1人でほかの街から観戦しに来たという男の子が参加してきて、後で偶然会ったときにはしばらくテニスの話で盛り上がった。ほかにも、英語で話しかけると「韓国人?日本人?」と控えめに聞いてくる女の子など(ファンが作ったシナーのシールをくれた)、なんとなく、日本人(外国人?)に興味があるのかな、と感じることも。めちゃフレンドリーというノリではないが、テニスという共通項があるとはいえ、初めて会ってひとしきり和やかにお話ができるのが楽しくて、上海ってこんな感じなんだなぁと思ったり。地下鉄内で他人同士が会話してるのを見かけたのは一度ではないので、カジュアルに他人と話す人たちに見える(これは外国に行くといつも観察するところ)。こういう光景を見ると、東京って他人同士が警戒しすぎだよな…といつも思う。

 今回のテニス旅で一番のハイライトは、やっぱり最終日の1日前。ダブルスの試合が始まるのを待っていたが、なかなか始まらない。たまたま後ろにいた人たちになんでだろうね?と話しかけた。アメリカの大学を出たという女の子と、その友達の男の子2人の3人組。別の街から来ていて、珠海も見に行ったらしい。試合がキャンセルになったのが判明し、今夜のフライトを明日に変更して部屋を探さねば…と呆然としてる私を見て、「自分らもホテル探してるから、一緒に来れば?」となにげなく誘ってくれた。2号館で試合を見ながら携帯で一通り手続きを済ませて、タクシーで莘庄のホテルへ移動。一緒にご飯を食べて、翌朝も朝食を食べて観戦し、夜空港に向かうまで一緒に行動した。よく笑ったしお互い一緒にいるのがすごく自然に感じられるというか、程よい距離感で、不思議な感覚だった。アジア人同士の穏やかな空気感もあったと思う。すごくすごく運が良かったとしか言えない。

 前回のボースタッドでも、ツイッター経由で突然現地で会うことになったファン仲間(デンマーク人)がいろんな意味で自分に近い人で驚いた。今回はあらかじめファン仲間と会うことにはなっていたけど、あの3人組との偶然の出会いは本当に貴重でありがたかった。まさか中国でこんな展開になるなんて、不意打ちもいいところだ。そのせいで余計に感動したのかもしれない。テニスがメインの旅だけど、毎回こんなことが起こると、次も期待しちゃうから注意…。これは幸運だっただけ(言い聞かせ)。8日間テニス漬けで十分満喫したけど、今回、結局一番思い出に残るのはテニスよりこっちだったな、と思ったりして。

 

 

 

Nordea Open (Swedish Open) @Båstad(ボースタッド)観戦記

 2023年7月17日~23日にスウェーデンのBåstad(ボースタッド)で開催されたNordea Openで観戦した記録です。前日16日から決勝の23日まで通いました。250の大会だし日本から見に行く人も少ないかと思いますが(多分現地で日本人は見かけなかった)、再訪するときのための備忘録として書いてます。この年はちょうど75周年記念で、そのせいか250にしては豪華メンバーが揃ったと言われていて、実際にほぼ同じメンバーが翌週のハンブルグ(500)にも出場。

 海外での観戦といえば昔USオープンに行ったことがありますが、その時はNYに滞在していてたまたま日程があったので2日ほど観戦しただけで、テニス観戦のための旅行は初めてです。

 アクセスや大会の詳細情報は当時のものです。なお、大会名は開催地名で呼ばれることが多いので「ボースタッド」とします。

 

 

現地に行くまでの経緯

 ルブレフのプレイを生で見たいという目的で、どの大会にするかずっと迷い続ける(この先日本に来ることがあるか怪しい)。考え始めたのが2023年シーズンの始め。ヨーロッパにするのはほぼ決めていたものの、なんといってもテニス遠征で厄介なのが、実際に出場するかどうかはギリギリまで分からないこと…。出発まで、というか出発後も大会初日直前までヒヤヒヤしながらエントリーのアップデートを確認。

 ボースタッドの決め手は、規模の小さい250であること、クレイであること、センターコート(以下CC)が小さいこと、スウェーデンは何度か行ってるので多少馴染みがあることの4点。アーカイブ映像を見ていると、ここのCCが一番小ぶりに見えた。ルブレフはCCでプレイすることになるので、グランドスラムのようにスタジアム以外のコートで見ることはないのを想定して、CCで見ても近いことを重視。

アクセス

フライト

 テニスのトーナメントはあまりアクセスのよくない場所で行われる場合があるけれど、ボースタッドも例外ではなく、フライト選びも少し迷った。最寄りはエンゲルホルムーヘルシンボリという小さな空港だが、日本からだと最低でも乗り換え2回になり割高。そのため、直行便のあるコペンハーゲンから約2時間半かけて電車で向かうのが一番効率がいい。ストックホルムは直行便がないし、ボースタッドとは対岸になるので、電車の移動も長くなる。私は実は直行便ではなく、行きも帰りもターキッシュエアラインズを利用してイスタンブールでストップオーバーした。条件はあるけど送迎付き完全無料のツアーがあったり、無料でホテルを予約してくれるサービスもあり、時間に余裕のある場合はおすすめ。今回は両方利用しなかったけど、ホテルは試しに頼んでみたら旧市街のいい立地のホテルだった。フライト代金も安い。

電車

 私はコペンハーゲンに2日ほど滞在していたのでコペンハーゲン中央駅から乗ったけれど、空港から直接向かうことも可能。乗車するのはイェーテボリ行きだが、この時は手前のMolndalまでしか走らず、行き先表示もMolndalだった。途中橋を渡り(景色も見える)、マルメ、ルンドと経由して約2時間半でBåstadへ。急行・各停などはないのですべて停車。私が行った時期は1時間に1本、毎時27分発だった。ヨーロッパの多くの鉄道駅には改札がない。とはいえ、8割方駅員が回ってチェックしにくるので、必ずチケットは買ってから乗ろう(罰金あり)。

発車時間やプラットフォームは直前に変わることもあるので注意。困っても掲示板の前に常駐する係員の人にすぐに聞ける。南ヨーロッパの猛暑のせいもあってか、25度にも届かない快適な気候のコペンハーゲンには観光客がたくさん。

 

券売機の使い方を聞きたければそのへんに必ず係員がいて親切に教えてくれる。クレカのチップを読み込まなくても数回試すと成功したり、ほかの券売機では問題なく購入できたりする。

 

指定席はなく、1等車を除いてどこに座ってもよし。おしゃべり禁止(騒いじゃダメ)エリアもあり。座席にはコンセントがあった。

 

 グーグルマップを見ていたので想像していたとはいえ、Båstad駅に着くと、緑が広がる景色に少し驚く。駅舎らしきものはあるけど、最初に到着した日曜日は無人だった(その他の曜日は不明)。駅前は店もなく、アパート(ホテル?)が数件とパドルテニスの施設があるのみ。駅を出て1つ目の停留所はスーパーや店が数件あるエリアだが、駅前にはほぼ何もない。一緒に待っていたおじさんと話していると、この駅はボースタッドの外れに位置するらしい。町の中心地は会場のあたりだそう。ちなみに券売機はプラットフォームにもある(赤い機械)。

バス

 このバスが曲者なのでちゃんと書いておきたい。プラットフォームを降りると駅舎の前にバス停がある。ほかにも2つバス停があるが、会場に向かうバスが停まるのは駅舎の前で、路線は501か502。バス停に時刻表はなく、電光掲示板もない。チケットもクレカが使えるのか分からないので周りにいる人に聞いて回る。コペンでは現金を使う必要がなく、現金(スウェーデンクローナ)のことをすっかり忘れて用意していなかった。隣で待ってたおじさんがもしクレカ使えなかったら払ってあげるよと言ってくれる。いざ乗り込んで、おじさんが運転手に聞くと、払わないでいいと言う。タダで乗せてくれた?と思っていたが、その後別のバスに乗っても「トレインステーション!」(英語話さない人)と言われたりで、最後まで確認できなかったけど、どうやら電車のチケットがあればバス代はいらないようだ。といっても見せる必要もなかった。現地の人々は携帯をタッチしていた。バスの発車時刻は電車と連動している(ということはやはり1時間に1本)。時刻表はグーグルマップで駅や停留所を調べれば表示されるのでここでチェックしよう。

 実際に乗る人に大声で言いたいのは、電車を降りたら即バス停に行って、誰も列を作ってなくても、とにかくバスが来たら譲らずに先に乗ること! なぜかというと、満杯にならなくても発車してしまうからだ。観客が多くなる週末はバスも混雑する。続々乗り込んでいると、車内はまだ立っている人もいないのに、多くの人をバス停に残してバスは発車した。残された人々は1時間待つことに。タクシーを見つけようとする人もいたが、平日はタクシーを駅前で見かけたものの、週末は呼ぶのが難しそうだった。私も待ちぼうけるハメに。歩くと1時間以上はかかる。最初は車内に乗客が立って乗ることが禁止なのかと思ったが、次に来たバスに早々に乗ると、どんどん詰め込んでいっぱいになったところで発車(やはり乗れずに残された人たちがいた)。立って乗ることはダメではないらしい。運転手の判断によるのか、スケジュールを優先したのか不明だが、とにかく早く乗ろう…

急げ~

 

降車はBåstad Torget。駅からは10分ほど。USBポートのある座席も。

 

Båstad Torgetに到着。

 

帰りのバス停は離れた場所に。こんなとこにあったのね…

 さて今度は駅に戻る場合。会場最寄りのバス停周辺には、駅方向に向かうバス停が見当たらない。これはグーグルマップでも見つからないので以前から不安だった。同じく迷ってそうな人に聞いて2人で戸惑っていると、バス停はあっちよ!と案内してくれる女性が。200mほど駅と反対方向に歩くとたしかにバス停発見。しかも電光掲示板付きで、あと何分で到着か知らせてくれる。が、ここにも落とし穴が。グーグルマップにも表示されているし、電光掲示板にも表示がでていたバスが来ない。時間をすぎると表示は削除され、次は40分後。この表示は当てにならないので、電車に乗り継ぎができる時間かどうかで判断すべし。こんな感じでバスに翻弄されたけど、時刻表はグーグルマップで、電車の発車時間と連動してないバスは来ない可能性あり、さっさと乗り込むべし、の3つを覚えておけばよいかと。まあ会場から歩ける/チャリで来れる宿をとるのがベストではある。

 コペンハーゲンから車で来たファン仲間の人と現地で2日ほど会って送ってもらったりしたので、車のアクセスについても少しだけ。パーキングは歩いて10分ほどの場所にあり、混む週末はスペースを見つけるのが難しいらしい。道も信号のない一本道なので、渋滞はしていたが、どうにも動かないという様子ではなかった。ただ時間は読めないので、友人は練習を見ようと急いでいたのにタッチの差で間に合わなかった、なんてことも。

 

宿泊

 ほぼ1カ月前と直前と言っていい時期にフライトを確保した私が一番心配していたのはホテル予約。ボースタッドは小さなリゾート地なので夏はにぎわうけどその他の時期は閑散としている人口5000人の町。ホテルの数は少なくて価格も高いことを予想していたけれど、まさにそうだった。グループなど複数人で行けばそうでもないかもしれないが、エアビーをみてもかなり高い。スウェーデン人の友人から、ヒュー・グラントが別荘持ってると聞いてたけど、サマーハウスでのんびりバケーションを楽しむ人々が多いんだろうなと想像する。会場内にあるホテル・スカンセンは翌年もキャンセル待ちだとか。フジロックの苗プリのようなもので、ここに泊まれれば最高だけど、そうもいかない。ホテルは歩ける距離が便利だが、歩ける距離ではホテル数もかなり限られると思うので、自転車レンタルしてるかどうかチェックしたほうがいいかも。実際会場内は自転車を多く見かけた。

 宿泊予約サイトをみても適当なホテルが見つからないので、グーグルマップも眺めていると、ホテルではなさそうだが宿泊できる施設を発見。16日と17日だけ空いてたのでとりあえず予約。ボースタッド・スポーツセンターという名のとおり、テニスコートや大きな陸上競技施設があり、ここを使用する人のための合宿所みたいな施設なので、設備は最低限。ちなみに到着した日はウインブルドンの決勝日で、テレビがあるから観られるかと思ったら映らず(翌日すぐに直しに来てくれた)、映ったとしても観られないと言われた。でもキッチンに行くと盛り上がっている。誰かのPCが側に置いてあったので、ユーロスポーツに加入してる人がテレビに接続して観ていたみたい。ジョコビッチ年間グランドスラムならず泣。

 この施設からはバス通りをひたすら歩いて20分。途中にスーパーマーケットや町の土産物屋、飲食店も少しあり。夏は22時くらいまで真っ暗にはならないし、歩いたり自転車で通る人もいるので、危険な雰囲気はない。いたってのどかな風景が続く。

ひとつのドアごとに4部屋ほど。壁は薄い。

部屋に飾られていた絵。街中にNordea Openの旗が飾られていて、街中で年に一度のイベントを(ささやかに)盛り上げている雰囲気。

ざーっとシャワーが降ってけろっと止むので、虹をよく見る

 

 ボースタッドには大会前日と初日しか宿泊できないので残りの日はどうしたかというと、隣駅のエンゲルホルムにホテルをとった。ボースタッドから12分。と聞くと近いが、電車は1時間に1本なので、それなりに時間を気にする必要はある(ほかにローカル線もあったかは不明)。ホテルの受付の人と話していると、テニスを見に来た客がこの町に滞在するのはあるあるらしい。一応ツーリストインフォメーションもあるので観光客もいるみたい。人通りも少なく、大変静かな町。宿泊したホテルは駅から徒歩2、3分で朝食もついていて(物価の高い北欧で朝食付きは素敵)、とても快適な滞在ができた。町の中心エリアなので、スーパーや飲食店、映画館も徒歩数分圏内。

 ちなみに、エンゲルホルムのホテルのチェックアウトは土曜日。500以上の大会だったら観たい試合も多いだろうし、ある程度大きな都市にある大会だったら、観光して時間潰せるので、最初からフル滞在を想定してもいい。しかボースタッドのような小さい町の場合、早々に見たい選手が負けて、ほかにそんなに見たい試合がなかったら時間を持て余すかも、土日はコペンハーゲンでホテルをとって、もし勝ち続けたらコペンハーゲンから通おう、と考えていた。そのため、土曜日はエンゲルホルムのホテルからスーツケースを持って会場へ向かい、ホテル・スカンセンの荷物置き場に預けた。土曜日はスーツケースと一緒にコペンハーゲンのホテルへ。嬉しいことに決勝まで進んだので、日曜日はまたボースタッドまで電車で通うことになった。この辺のホテル予約も難しいところ。誰の試合でもいいからテニス観戦を楽しみたい、なら話はもっと簡単なんだけど。

 

チケット

 公式サイトから簡単に購入可能。曜日ごとに枚数と空いてる席を選ぶ。この年はナイトセッションは水曜日のみだった。やはり土日は早く埋まりがち。購入後に送信されるメールからリンクに飛んでQRコードを取得する。ゲートで見せると腕にスタンプを押してもらえるので、入退場するたびにそれを見せる。リファンドはできないが、スウェーデン在住の人なら可能。

 チケットの種類は、Numbered Seat(CCの指定席)がセクションごとに3種類とGround Pass。1SEK=14円で計算すると、

Numbered Seatは270SEK~650SEK(約4000~9000円)

Ground Passは180SEK~395SEK(約2500~5500円)

 Ground PassはCCの席はないので、周りで立って見ることになるが(スペースはあまりない)、CCとコート1があるエリアに入場することができる。コート1はフリーシート。下の写真がGround Passで入れるエリア。2つのEntranceでチェックされる。大会グッズの店はこの外にも1軒あったが、メインの店はこのエリア内にある(売り切れるのので早めの購入がおすすめ)。チェックが始まるのは第1試合のどれくらい前か忘れたけれど、早めに行けばチケットがなくても、CCやコート1で練習する選手は見られる。

 

 私はとりあえず2回戦が行われる水曜日と木曜日、QFの金曜日のNumbered Seatを事前にネットで購入。もちろん現地でも買えるので、火土日は現地で購入した。月曜日は見たい試合がなかったので、チケットを買わずに練習コートで待機。練習コートは誰でも入ることができる。こちらは後述。火曜日でも当日に6列目で買えたので、週の前半はそれほどぎっしり埋まってる感じではなかった。

 問題は土日。ルブレフが勝ち進んだので、チケットを急遽購入。いろいろ悩んでいたら、チケット売り場の人から、「もしいらなくなったらそこの角で売ればいいから」とひそひそ声でアドバイスされる。ところでこの座席、実際は適当に座っている人が多い。ファン仲間たちによると、前が空いてたら適当に座るよ、という反応だったので、そういうものらしい。私も自分の席に誰か座ってることがあったけど、言えばどいてくれるからお互いあまり気にしなくてもいいと思う(もちろん、チケットはちゃんと買おう、というかチケットがないと入れないけど)。日本でもこういう感じなのか分からないけど、多分NGっぽいし、怒る人多そうよね…。

会場内

 ボースタッドの会場はかなりこじんまりとしている。CCとコート1のあるメインエリア、練習コート、飲食店、ビーチ、どこに行くにも2分もあれば移動できる。

試合の始まる1時間くらい前からこのゲートにアッシャーがいるので、腕のスタンプを見せて入場する。

メインの通り? 選手がしょっちゅう通り過ぎるので、子供に呼び止められてサインしたりセルフィ―を撮る姿もよく見かける。ガン無視してる選手も見たけど、誰かは言わない。

ホテル・スカンセンの入り口。大会期間中はHQ的な施設となり、選手や大会関係者が滞在している。宿泊していなくても中には入れるので、見学したりトイレを借りたり。ちなみにトイレはCCやコート1の建物内、ビーチ近くにもあって困らない。

コート1には給水所。

コート1とCCの間の通路。

 

センターコート

 私は大会期間中ずっとベンチ側の席にいた。初日は2列目だったけど、カメラを向けるのもちょっと躊躇するくらい近い! 近すぎてボールの行方が見えない! ちなみに、反対側の前列はなんとなく関係者が多いような印象。その上は遠い2階席で、通路が少ないので途中退場が大変そうだった。ベンチ側がおすすめ。

ルードにはもっとクールなウェアを着せてほしい。

実際見るとほんとに脚が細くて、これでよく踏ん張れるなぁと思っちゃう。

なんと優勝……!

ベンチ側のコート入口。ルブレフは試合後にコート上でサインもらえなかったファンたちのために、この先の選手出入口でさらにサイン続行。行列も少しあったが、ボースタッドは人も少ないので、押し合いへし合いしながら必死になる必要はなし。

このテントは関係者やゲストエリア。ここのほかにも、後方に飲食しながら観戦できる(たぶんしてないけど)エリアがあり、うるさくはないが談笑する声が聞こえるので、ルブレフが審判に苦情を言う場面も。場所柄か、リッチな人々の社交場的な雰囲気もあった。

クレイはスライディングする音がいいですね。

朝の早い時間ならCCでの練習をゆっくり見ることができる(人はほぼいない)

コート1

フリーシートだが、Ground Passがないと入れないエリア。朝早い時間や大会前日は誰でも入れる。

大会前日のズベレフとルースヴオーリの練習。やっぱり観客はとても少ない。

こちらは本戦。ラヨビッチは初戦で負けてしまった。この大会、フォキもルースヴオーリも初戦敗退で、ばたばたしててフルで試合が観れずに泣いた。

 

練習コート

 なんだかんだここにいた時間が長かったせいか、一番思い出の場所になった。試合は配信や放送で見られるけれど、練習は大きな大会ならたまに配信があるか、現地に行った人が撮影した短いビデオでしか見ることができないので貴重。

Welcome to Nordea Open この看板の裏が練習コート

練習コートの入り口

コートは4面。大会前の土日は予選も行われる。

間の通路は誰でも通ることができる。出てきた選手がサイン攻めに遭うポイントのひとつ。写真はエチェベリー。

誰でも入ることができるので、近所の人が犬を連れてなんとなく見ているという光景も。CCの試合中に、ルードが犬の鳴き声がしてサーブを止めたシーンがあったけど、予選試合中でも犬が何匹もいるのでちょっとびっくり(実際鳴いてた)。人も少ないしのんびりした雰囲気。

何度も言うけど、ほんとうに誰が練習していても終始こんな感じで天国。唯一混んでるな、と思ったのは、地元期待のレオ・ボルグの練習くらいだった。

誰とも場所を争うことなく、こんなにすんなりと近くで見ていいんだろうか…。毎日こんな感じだった。練習コートだと静かなので、配信では気づかなかった音も聞こえる。ルブレフはよく打つ前に口をふくらませているけど、ふーふー吐く音が大きくてびっくりした。

この日は到着したばかりなのに、遅い時間だったからか、コート整備泣

ルースヴオーリもコート整備してたなぁ。

練習コートを見ながら飲食ができるイタリアンカフェが美味しかった。

コート4面のうち2面は観戦席なし。自転車もたくさん見かけた。突然ざーっと降り出す雨に襲われたらここで雨宿り。

 

 500以上の大会であれば、練習スケジュールを公開することも多いけれど、ボースタッドは公開なし。Courtesy Deskにしつこく聞いたけれど、小さい大会だからそういうのはやらない、とのこと。スケジュールが分からないと、ここで地蔵になるしかなく、CCのほかの試合が観られなくなってしまう(見たい選手の練習を最優先した場合の話)。ファン仲間に愚痴っていたら、スケジュールを教えてもらう方法を伝授してくれた。さっそく連絡してみると、返事がきたりこなかったり。返事をもらえない日は、Player's Loungeに直接聞きに行くことに。入口にいるおばあちゃんスタッフに、日本から見に来たと訴えると、まあそれは大変、絶対練習見ないとね!と担当の女性を連れてきてくれて、無事直接教えてもらえた(実はその日はキャンセルしてよそのコートで練習してたのを本人たちのインスタで知る泣)。入口にいるスタッフによっては取り合ってもらえないこともあった。あらかじめ教えてもらえた日もあったけど、とにかく練習スケジュールに振り回されたなぁ。分かっていれば効率よくCCと行き来できるのにね。リスケ前提は承知なので、公開してもらいたい。それだけがボースタッドの難点。

 サイン事情は、練習コートなら比較的簡単にゲットできる。ただし、サインをお願いしているのは8割方キッズ。そして練習の前後って、意外と愛想よく対応している人は少なくて、ぴりっとした雰囲気の人が多かった。いつものルーティーンだからそういうものだろうなぁ。人にもよるけど(ルースヴオーリはにこにこと話してくれたのが印象的)。CCの試合後の場合は、ベンチ側の最前列で待つんだけど、大きな大会で見るような、コートの外でもサインし続けてるのはルブレフは1度しか見なかった。そもそも人が少ないのもある。

 

飲食

 会場内の飲食店は、ホテルに併設されているレストランや、ちょっと高級なレストラン、カジュアルなバー&レストラン、練習コート横のイタリアンレストラン、ビーチ寄りにも数軒バーレストランや小さな飲食店が並ぶ。コート1の奥やヨットハーバー沿いにはフードトラックも。行列もたいしたことないので楽。会場の外はバス通り沿いにたまに見かけるくらい。ちなみにスウェーデンクローナは今少し安いのだけど、元々の物価が高いので(イベント価格もある)、外食は日本の2倍に近い感覚。いや、日本が安すぎるんだろうけど…。

寿司トラック。ぎっちり握ってある海外寿司だけど普通においしい。

このタコスの店は3回リピート。

サンドイッチとコーヒーなどの軽食で利用したイタリアンカフェ。おいしい。

タイ料理も。

夜はクラブと化すバーレストラン

オンコートインタビューでも話題にしていたけど、夜中もクラブの音楽がうるさいのは恒例らしい。ホテルから丸聞こえなので選手は辛そう。メインエリア以外は誰でも入れるし、ヨットハーバーもあってテニス目当てではなく普通に遊びに来てる人も多い。

 

その他

 白い砂浜のビーチが広がる。朝も夕方もいつ行っても人はまばらで、みんなビーチには興味がないみたい。泳いでる人も数人みかけた。

建物内にはスパ併設。

 

キッズイベント。ボールキッズたちがルブレフに質問して、彼がそれに答えて最後に記念撮影という簡単なものだった。イベントの少なさはやはり大会規模の小ささを感じる。大会によってボールパーソンの年齢層は違うけど、ボースタッドは10代前半の子が多くてみんな可愛い。

大きな大会だと何十人もガット張り職人が待機しているけど、ここでは踊り場のような場所でひっそり。上の階の踊り場は簡易床屋になっていた。

 

 天気は、海沿いなのもあって大変変わりやすい。天気予報はあてにならない。風が強く、雨雲が来るのが分かるのであらかじめ避難できるくらい分かりやすい。ざーっと降っては20分後には止み、かーっと晴れて日差しが痛い。曇ってる時間帯も長かったのに、びっくりするくらい焼けた。

 結局、夜を除いて長時間降り続けたのは、滞在中、決勝の後だけだった。この決勝日、終日雨予報で、翌日に延期すると聞いていたほど怪しかった。直前に予定どおり開始するのが決まって始まったら、少し経ってざーっと降りかけるも、なんとか中断することなく続行して、ずっとぎりぎりの状態で持ちこたえる。そして試合後にどしゃぶり。つくづくラッキーだった。翌日延期になってたら、イスタンブールに向かうので観戦できなかった。

 20℃に届かない最高気温と15℃以下になる最低気温に行く前はびびっていたけど、結局夏だし日差しがでると暑いので、念のために持参してた薄手のダウンは着なかった。昼間は薄手のウインドブレーカー、朝晩は寒くなることもあるのでトレーナーがあれば十分だった。この気候が一日中外にいるのにちょうどよかったなぁ。

 

最後に

 この旅はフライト確保してから出発までのストレスが半端なかったけど、結果的に信じられないくらい幸運で楽しい経験になった。試合は2回観られれば良しとしよう…と思ってたのが、4回も観戦できて、なんと優勝。現場にいると現実味がなくてだいぶ後になってこうして振り返ることでようやく実感がわいた。初めてクレイコートであんなに間近で観戦できたり、急遽ファン仲間の人に会えることになって、コペンハーゲンまで車でドライブしたり、一生ニヤニヤしちゃう思い出ができたりで、ここまで来て本当に良かった…。多少のトラブルも旅の醍醐味。

 行く前までは、日本からこんな小さな町までテニス観に行く人なんていないだろうな、と我ながら思っていたけど(実際、誰に言っても驚かれた)、いざ行ってみると、ボースタッドはアクセスはそれほど悪くない大会だと思う。コペンハーゲンまで直行だし、そこから電車で2時間半。駅からはバスで10分。会場周辺にホテルが取れれば楽勝。

 ボースタッドを選んだ理由は書いたけど、つくづく、自分が求めていたものがすべてこの大会にあったなぁと振り返って思う。SNSでよく見る、サイン争奪戦とか人で埋め尽くされた通路とは無縁の、のどかな環境。かといって寂しい感じはなく、適度に賑わいもあり、すべてが程よい(歴代最高の77000人を動員したらしい)。ああ、また行けるかなぁ。グランドスラムは忙しすぎて疲れる、もっとマイペースにテニス観戦を楽しみたい、という人には全力でおすすめします。

 それにしても海外テニス遠征、楽しかったので、1シーズン各ツアーを回ってレポ書く仕事があればぜひやってみたい。どんな辺境でも行きます!

 

追記:この記事はボースタッドのガイドのつもりで書いたので抑えてますが、ルブレフファンの方でツイッター経由で読んでくださってる方は、現地で撮ったビデオなど載せてるので、期間検索などで探してみてください!

中年男性の解放の物語:「バスタブとブロードウェイ」

 劇場公開時に評判が良かったのを思い出して、U-NEXTで鑑賞。あらすじをさっと紹介すると、ある男性が、1950~1980年代にアメリカの企業が社員向けに上演したミュージカルのレコードを収集するようになったことから、彼の人生が変わる、というもの。最初は寡黙な男性がレコード収集(しかもかなりニッチなジャンル)にハマる話かと思いきや、聴くだけにとどまらず、だんだん元気になって行動力を発揮し始める。最終的には、中年男性が自分を解き放つ展開に。人生に迷った中年男性がタコとの交流で生きる力を取り戻す傑作ドキュメンタリー「オクトパスの神秘: 海の賢者は語る」と相通じるものがある。何かに、特に音楽に夢中になったことがある人はじんわり共感すること間違いなし。

 

レコード収集のきっかけ

 スティーブは2015年に終了したアメリカの長寿トーク番組、Late Show with David Lettermanのコメディライターを長く務めたベテランだ(撮影は番組終了前から始まっていて、終了する様子も描かれている)。しかし彼自身は、長年毎日ギャグばかり考えてきたせいか、もう何かを見たり聞いたりしても笑えなくなってしまったという。帯番組のライターというのは相当なハードワークなのだ。そういえば、コメディアンには心を病む人が少なくないという話も聞いたことがある。妻子はあるものの、趣味もなく、同僚以外には友達もいない、仕事漬けの日々を送っていた。熱心な音楽好きでもレコードコレクターでもない彼がこんなニッチなジャンルを知ったのは、番組のネタとして扱ったことがきっかけだった。おそらく、「いやぁ、こんなヘンテコなレコードが存在するんですねぇ」なんてレターマンに言わせていたのだろう。

 

レコードを掘りまくる

 よく聴いてみると実に素晴らしい、と気づいたスティーブは、あらゆる手段を使ってレコードを掘り始め、コレクターの間で有名人になるまでのめりこんでいく。レコード屋に足を運んで、企業ミュージカルのレコードが入ったら連絡をくれと伝えたり、もちろんebayも活用する。持ってないレコードを交換したりするうちに、仲間ができ始める。ジャンルがニッチなだけに、狭く熱いコミュニティが形成されていたのは想像にかたくない(めちゃ楽しそう)。コレクター仲間として、有名なミュージシャンも出演している(デッド・ケネディーズ、アリエル・ピンク)。あるある…と思ったのが、コレクターの中には日本人もいると紹介されていたこと。日本人のレコード収集癖はやはり有名だ。

 

そもそも企業ミュージカルって何?

 さっきからこの手のレコードがニッチだとか、ヘンテコだと書いてきたけど、そもそも企業ミュージカルとは?から始めなきゃいけなかった。これはアメリカの企業が社員向けに製作・上演したミュージカルで、最盛期は1950年代から1970年代。社員向けなので、一般の人々は観る機会のない、幻のミュージカルともいえる。50年代にミュージカルが人気になったことから、多くの企業が社員教育や士気向上のために取り入れた。要は、社員にはっぱをかける役割を担っていたのだ。上の写真は、おそらく農耕機械を売る会社なのだろう。多分、「うちのトラクターは世界一♪」とでも歌っていると思う。冗談じゃなくて、一言一句、そのまま。これが企業ミュージカルの世界だ!

 それがシリコンであれ、バスタブであれ、製品を賛美する歌がエンドレスで歌われる。かなり露骨な表現が多く、社員でない人間が聴くと(社員でもなんじゃこれ、と思った人はいるはず)なんとも滑稽だが、もちろん大真面目に作られている。それも、大金をかけて。当時ブロードウェイで上演された人気ミュージカルの何倍もの製作費だったという。内容はまったく一般受けしないが、かなり正統なミュージカルが、社員に見せるためだけに製作されていたのだ。なんともぜいたくな時代。スティーブが集めているレコードは、一般販売も放送もされていない、会社のノベルティのようなものだった。歌詞はいかにも宣伝文句で笑えるのに謎に演奏も歌唱力もクオリティの高い、希少なレコード。これはコレクター心をくすぐるよね。

 日本でもその昔、社員とその家族を会わせて何百人も福島のハワイアンズで慰安旅行、とかあったのを思い出したが、スティーブは、これはアメリカ独特のカルチャーだと分析している。確かにこれだけの規模とクオリティで実現できるのはアメリカだけだったのかもしれない。ちなみに、80年代頃からアメリカの景気後退に伴って(日本車のアメリカ上陸が要因に挙げられていた)企業ミュージカルは衰退していったらしい。なにせ企業なので、金がなくなればすっぱり止めてしまう。

 

ティーブ、作曲家や出演者に会いに行く!

 誰も知らない企業ミュージカルの世界の虜になる、までは、そういう人もいるだろうなと納得するが、スティーブはその先に突き進んでいく。レコードを見たりコレクター仲間と情報収集するうちに、何人かの作曲家や出演者の名前を認識するようになり、レコードを聞けば、あ、これは〇〇が作った曲に違いない!と当てられるまでになった。そして存命の人たちに実際に会いに行くのだ。これは彼自身がエンターテインメント業界で製作者側として働いていることが大きく影響していると思う。自分が心酔しているミュージカルを作った人々が、誰にも知られていないと思うと、いてもたってもいられなかったのだろう。

 といっても、最初スティーブは彼らに会って、珍しいレコードを手に入れられたらラッキーくらいの気持ちだったらしい。思い出してほしい。彼はただの熱心なコレクターで、人付き合いもあまり上手くないタイプなのだ。だが実際に会うと、思いのほか舞い上がってしまったり、話を聞いてるうちに情が移ってしまう。彼らが当時のことを語り出す。ブロードウェイを目指していたが、なかなか機会に恵まれない時代に、ギャラがいい企業ミュージカルに助けられた人が多くいるのだ(駆け出しのころだとは思うが、あのマーティン・ショートも出演していた)。実際にモノを作る人たちなので、企業ミュージカルだからと手を抜いたりバカにすることなく(ダメ出しもくらう)、みな真剣に取り組んで家族のような雰囲気になっていた。だが企業の経営が悪化するとミュージカルに呼ばれることもなくなり、みなバラバラになっていく。そんな栄枯盛衰のはかなさが企業ミュージカルにはある。一般のミュージカルとは違って、記録に残らないのだ。

 彼らと親交を深めるうちに、スティーブはまた行動に出る。を執筆するのだ。アメリカの興行の歴史に埋もれた世界が日の目を見ることになる。そして映画の最後のシーンは、冒頭のスティーブからは想像もつかない事態に!

 

最後に

 誰にも知られずにいたアメリカの古き良き文化を蘇生させる。スティーブが企業ミュージカルを世間に紹介したのは、大げさかもしれないけれどそう表現してもいいと思う。シニカルでもはやコメディを見ても笑えなくなったコメディライターが、なぜここまで行動力を発揮して事を成し遂げたのか。世の中は今よりシンプルで、朗々と「みんながフォードの車を求めている」と歌い上げることのできたアメリカへの郷愁?オタクの暴走?それもあるかもしれないが、実際に”人に会った”ことが大きな転換だったのだと思う。会って人の話を聞くことで、むくむくと力が湧いてくる感覚。よく言われることだが、人を変えるのは人、なのだ。彼らと出会ったことで、彼自身も蘇生されたんだなぁとしみじみしてしまう。あと、スティーブがレコードを聴いてるときの顔!いかにも人間が満ち足りているときの顔、という感じで、思わずこちらもにこにこしてしまう。

 

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レターマンショウにスティーブ自身がゲストで出演した映像。

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「ラブレス」2022年の今見ると興味深いロシア映画

 今年2月のロシアによるウクライナ侵攻以来、いろいろ重なってロシアという国に興味が沸いてきた。以前から不思議な国だなと思ってたけど、現地の知人なしに旅行するにはハードルが高く(ビザもいるし)、遠巻きに眺めながら、どこから手を付けていいか分からない状態だった。それが今回の侵攻、メディアに出ずっぱりだったロシア識者の小泉悠さんの分かりやすい解説、加えて今推しのテニス選手がロシア国籍なのもあり、ロシアを知る材料がないかちゃんと探してみることに。

 小泉悠さんの「ロシア点描」は、自身のモスクワ滞在中の体験をベースに、ロシア人と交流して得た体感や人々の生活習慣が書かれた気軽に読めるエッセイで、これに似た本を読みたいと探してるのだが、数冊発見したものの、少ない(あれば教えてください)。

 じゃあ映画で探そうとなると、これまた戦争もの以外かつ現代ものになるとあまり見当たらない。ふと、アンドレイ・ズビャギンツェフ監督作「ラブレス」を以前冒頭だけ観て中断していたのを思い出した。これロシア映画だった!ということで、再見。2017年製作だが、今見ると、ぞっとする作品だった。

あらすじ

 モスクワ郊外に住むボリスとジェーニャ夫妻は離婚協議中で、ひとり息子のアレクセイがいる。お互い浮気相手がいて、ボリスの彼女は妊娠中。ジェーニャも年上の裕福な男性と付き合っている。ある日、アレクセイが忽然と姿を消す。警察に届けを出すが、手が回らないのでボランティアの捜索隊を頼るように指示される。夫婦はいがみ合いながらも捜索を始めるが……。

 

壮絶な罵り合い

 夫婦の罵り合いが冷酷すぎる。ピンポイントで突き刺して確実に相手にダメージを与えるような発言の連続。息子を押し付け合う2人は自分のことしか頭にない。両親の口喧嘩を聞いたアレクセイの顔……。夫婦間だけでなく、ジェーニャとその母の会話も同じように冷え切っている。あまりにも攻撃的なので、そんなことを言わなければいけない本人が最後には可哀そうになるくらいだ。本心でもあり、ままならない自分の人生への愚痴でもあるのだろう。

 ジェーニャが恋人に、自分は子供が欲しくなかったと告白する場面も印象深い。子供ができたのは偶然、たまたまそのとき付き合っていたのがボリス、母から離れたかっただけ。子供にしてみたら悲しいだろうけど、本当なのだろう。

 

ボランティア捜索隊

 息子が行方不明になった夫婦は、警察はリーザ・アラートを頼るよう勧める(熱心に探してくれる、と言い添えて)。2010年に設立された非営利組織のボランティア捜索隊「リーザ・アラート」の存在は、この映画で多くの人に知られるようになったとか(記事)。作品の中でも、非常にてきぱきと指示が下され、統率のとれた団体として描かれている。ロシアではキノコ狩りに行ったまま行方不明になる人も多いらしい。

 あれだけ子供を押し付け合っていた2人が息子の行方不明にどう反応するかなと思っていたら、やはり心配でたまらないらしい。と同時に、虚無な感情も見える。

 

虚無感

 ジェーニャが携帯電話をしきりに触っているシーンが多い。世界中で見られる光景ではあるものの、やはり人が携帯を見ている姿はどことなく空っぽな印象がある。ジェーニャもボリスも恋人がいるが、相手を必要としているものの、どこかぼんやりして関心がないようにも見える。人とのつながりを欲していると同時に、コミットできないという矛盾。夫婦が冷たく罵り合うのは個人の資質のせいなのだろうか。終盤になると、それだけではないかもしれないと思わせる、当時の社会状況がみえてくる。

 アレクセイが失踪したのは2012年であることが貼り紙のクロースアップで示された後、数年が経ち、ボリスの彼女が生んだ2、3歳くらいの子供が現れる。テレビでは、ロシアのクリミア併合が報道されている。それを無表情で見ているボリス。テレビの前でうろうろする子どもを、どさっとベビーベッドに落とす。

 上の写真は恋人のアパートで過ごしているジェーニャ。ジャージにとその色に注目。家ではジャージを履くのか?と思ってると(前にそんな場面はなかった)、おもむろにテラスのランニングマシーンでジョギングを始める。RUSSIAと書かれたジャージの上着を着て。

 

 思わずぞくっとするシーンだ。今見ると尚更。物語は2012年に始まり、最後は2015年頃らしい。プーチンが大統領に返り咲いた年に始まり、2014年のクリミア併合を経たあたりの出来事だ。政治状況と絡めた監督へのインタビューはこちらくらいしかなかったが興味深かった。以下監督のインタビューでの発言。

「かつては社会に希望があった。いい方向に変化すると信じることができた。例えば企業を設立すれば発展を期待できたし、暮らしや社会の住みやすさは今後よくなると思うこともできた。子どもたちには未来があるだろうと信じることもできた。そういうものの見方がまったく変化させられ、よりよい変化を信じることなどできなくなった。ロシアの政治の雰囲気や、人々の魂あるいは精神状況が変わり、パラダイムが変わってしまった。政治制度がよい意味で変わるとは思えなくなり、代わりに無関心が訪れ、とりわけ社会に積極的に変化を求める人たちが茫然自失とする状況になった」

 おそらくジェーニャも多くのロシア人と同じように、愛国心をあおられたのだろうと想像できる。人間は住んでいる環境に影響されずにはいられない動物なのだと改めて思わされる。日本も2012年あたりから、嫌な空気が加速的に蔓延している……。

 

 とても静かな映画でセリフも展開も少ないが、今みると、時代背景などを絡めてとても興味深く見ることができた。静かなシーンが多いだけに、??なシーンがあると妙に気になった。例えば、捜索隊がアレクセイの友人に教室で聞き取りを行った後、教師が黒板を拭いて、帰り支度をするシーン。妙に長くて、何か意味があるのか?と勘ぐってしまう。それについてどのインタビューを読んでも触れられてなかったけど、多分意味はないんだろうな。町山さんの解説も聞いてみたい。

 ちなみにロシア語ってどんなだろうと初心者向けの本をみてたら(yes/no, thank you, helloしか知らない)、「私はアレクセイ」なら、「ヤー アレクセイ」だけで、be動詞がないことに驚いた。

 

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「産婦人科医アダムの赤裸々日記」「シャイニングガール」

  • 産婦人科医アダムの赤裸々日記
  • シャイニングガール

産婦人科医アダムの赤裸々日記

皮肉の嵐に大笑いしながら、次の瞬間にはあまりの辛さに胸が痛くなる…。辛い現実を笑い飛ばすイングリッシュ製作品の見本のようなドラマだ。2000年代にNHSで産婦人科医をしていたアダム・ケイによる医療ノンフィンクションのドラマ化(邦題「すこし痛みますよ〜ジュニアドクターの赤裸々すぎる日記」)。

 

NHSはイギリスの医療システムで、基本的に治療費は無料なため、深刻度に関わらず人が押し寄せていつも混雑している。医師の人手は足りず、給料も低い3K(死語)な職場環境で瀕死の状態で勤務する人々。アメリカのドラマなら、そんな中でもやりがいや仲間同士の絆を描くところだが、イングリッシュなのでそんなことは期待してはいけない。極端な描写ではあるだろうけど、相手に不満をぶつけまくるし(穏やかに、かつ鋭い)、暖かいやりとりはほぼ皆無。そんな過酷すぎる日々を送る医師たちを見ているのは辛いはずなのに、視聴者を爆笑させるのがこのドラマのすごいところだ。わははは!となった後に、ずーんと突き落とされる(泣いた)。上の写真ではベン・ウィショーがカメラ目線だが、カメラに向かって話すシーンもしばしば。辛い現実を客観視することでどうにか乗り切るしかないという諦観…。

 

主人公は同僚たちから嫌われているという設定もイングリッシュならではな気がする。プライベートでは恋人や母親(嫌味な上流階級)との関係に悩み、ゲイであることを職場で隠し、余裕がないので態度が悪い。あと1話しかないけど、どうまとめるのかな…と思いながら観ていたが、主人公はいい人になりました、めでたしめでたし、ではなく、ほんのりと改善していくのも、あくまでリアルだった。ああ見ごたえのあるドラマを久々に観た満足感。ベン・ウィショーってあまり意識して観たことがなかったけど、雨に濡れた捨て犬みたいな見た目なのに、めちゃくちゃ魅力的で、人気があるのがようやく分かったなぁ。

 

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「最後の決闘裁判」「ゲティ家の身代金」「ナイブズ・アウト」

リドリー・スコットクリストファー・プラマーの流れで3本。

最後の決闘裁判

リドリー・スコット監督、マット・デイモン&ベンアフ脚本出演の本作は、アメリカでも日本でもコケたらしいけど(宣伝不足?中世ものだから?)、観た後誰かと話したくなる映画だった。また、ジェンダー問題を中世に起きた史実を通して描くことで、より強く意識させられる。決闘は迫力があるものの、見終わる頃には、勝手にやってろって気分に。

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