virgilの日記

映画、シリーズの感想多めです。

Amazon Primeで観た犯罪ドキュメンタリー2本

アマプラのほかに、hulu、U-NEXTでも観られるみたい。

カルト教団:ウェイコ事件の真相 -狂気 or メシア-

f:id:virgiltx:20220215104331j:plain

左がデビッド・コレシュ スピルバーグの若い頃に似ている

Netflixの「マンハント」の中で、FBIがウェーコの二の舞は避けたい、と何度も話すのを覚えていて、ウェーコ事件てなんだろと思ってたところで見つけたシリーズ。デビッド・コレシュを教祖とする新興宗教団体ブランチ・ダヴィディアンが武装しているという情報を得たをFBIとATF(アルコール・タバコ・火器及び爆発物取締局)が施設を包囲。結果、建物内に火の手が上がり、多くの子どもを含む80人近くが死亡した事件。

 

 

銃器を売買したり、教祖が一夫多妻制をとる、最終的に集団自殺するなどカルト集団あるあるな面もありつつ、熱心な聖書研究者でもあるデビッド・コレシュに狂人という印象がなかった。何かを突き詰めて考えた末の自然ななりゆきにも見える。一番印象に残るのは、ATFの段取りの悪さ。決行日がマスコミに漏れることは珍しくない(「マンハント」でFBIがテレビ局に捜査妨害だと怒鳴りつけるシーンはこれの教訓)。しかし、施設の住人がマスコミから道を聞かれたことで教団側にバレてしまったのを共有できず、突撃班は相手が待ち構えているのを知らずに奇襲失敗。その後交渉が長引くと、しびれを切らしたFBIが突入、集団自殺を招いてしまう。聖書の学者がデビッド・コレシュの声明を聞いて、信者を相手にした交渉の仕方を提案したが、法執行機関は誰を相手にしているのか理解しようとしなかった。生き残った9人の信者・元信者の証言がたくさん収録されているのはみどころ。

 

キリング・シーズン ロングアイランドの連続殺人鬼

f:id:virgiltx:20220215112143j:plain

2人の映画製作者が出演・ナレーションを務めるタイプのドキュメンタリー。ロングアイランドの連続殺人事件を独自捜査していたが、ここだけではなく、アトランティックシティ、デイトナビーチアルバカーキでも同様の事件が起こっていた。ネット探偵や警察組織以外で独自調査する人々に取材すると、アメリカ国内でおびただしい数の失踪者(失踪届がない人も含む)の未解決事件が存在する事実に直面する。

 

一応捜査はするけど、解決にはもちろん至らず、未解決事件が山のようにあること、被害者が麻薬中毒者やセックスワーカーの場合は捜査すらされないこと、多数の連続殺人鬼が野放しであること、トラック運転手の間では人を殺すことがもはや秘密ではないこと(冗談かどうかは不明だが、実際に逮捕されたトラック運転手の殺人犯の証言)、など知りたくない事実がどんどん浮かび上がる。有名なシリアルキラーのドキュメンタリーはたいてい60~80年代のもので、当時各地域の警察署は連携を拒むため州や地域をまたがると捕り逃がす、というケースが多かったが、今日でも同じだとは。また驚いたのが、未解決殺人事件の数は大幅に増加していること。てっきり減っているものだと思っていた。DNA判定などの技術が進んでも、そもそも捜査しなければ意味がない。シリアルキラーは知能が高く慎重、という定説はもはや崩れているのかもしれない。「警察が捜査しないなら、わたしたちがやるしかない」というナレーションはちょっと衝撃的だ。ネット探偵の興隆はその一端なのだろうけど、信用できない投稿も検証するという無駄骨も多そうだから、シリアスな人だけが集う招待制掲示板があれば(あるかも?)、そしてその情報を受け入れる警察の体制があれば前進するのかな、と思ったり。警察関係者本人も登場して現状を暴くこんなドキュメンタリーが撮れることはかすかな希望、と思ってしまうのは日本人だからだろうな。これくらいの情報公開はアメリカでは当たり前で、闇はもっと深い。

 

犯罪ドキュメンタリ―で面白いのが、その事件が起こった街と事件の関係だ。「事件現場から セシルホテル失踪事件」ならLAのダウンタウン、「事件現場から タイムズスクエア連続殺人事件」はNYのタイムズスクエア。「ジェフリー・エプスタイン 権力と背徳の億万長者」ならパームビーチといった具合に、犯罪が起こる背景が街の成り立ちや風土と密接に絡んでいる。ロングアイランドは、NYに通勤する典型的な郊外として開発された。「憂鬱な郊外」には、鬱屈とした気持ちのはけ口となる空気があるのかもしれない。