virgilの日記

映画、シリーズの感想多めです。

「ドーナツキング」

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カンボジアの内戦で難民としてカリフォルニアに渡ったテッド・ノイ。ドーナツ店で働き口を得ると、家族総出で働きまくって独立し、西海岸にドーナツ帝国を築き上げる。次々とやってくる多くのカンボジア難民にそのノウハウを伝授して、新境地で右も左も分からない同志たちを救った。大金持ちになり順風満帆だったテッドの帝国はあっけなく崩壊するが、それぞれのドーナツ店は生き残り、アメリカで生活基盤を築く手助けをしてくれた「テッドおじさん」は伝説として語り継がれる。

 

テッドたちが渡米する背景となるカンボジア内戦について意外と長く時間が割かれていて、そこで生活していた普通の人々に降りかかった苦難が協調されていた。一番驚いたのが、難民の世話をして仕事を見つけるサポートをしてくれるスポンサー制度だ。これ今でも存在(機能)しているのか分からないけど、ベトナム戦争後の疲弊したアメリカで、この余裕が社会にあったと思うとすごい。反共産主義に燃えていたから、カンボジア難民を救え!ムードが報道で広まっていたのもあるだろうけど。

 

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西海岸でドーナツのチェーン店を展開していたウィンチェルで働いてドーナツ作りを学んだテッド。独立してからの怒涛の出店は、まさに恩を仇で返す、なんだけど、「競争がアメリカを強くしたんだよ、ふふふ」。当時は東のダンキン、西のウィンチェルという図式で、ダンキンは西に進出しようと試みたが、テッド帝国に阻まれて諦めた。その後テッドが出店を支援した店がぐんと減り、ダンキンは再び西を攻め始める。企業原理とはいえ、サバンナの生存競争というか、まさに弱肉強食の世界だ。

 

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多くのカンボジア難民にとって恩人だったテッドは、あることがきっかけで身を崩していく。ここを待ちながら映画を観ていたが、もうだいぶ尺が少なくなっていた。全部観た後には、なるほどね、という感じ。テッドに支援を受けた人々は失望したものの、自分たちに与えてくれたもののほうがはるかに大きかった。今は世代も変わり、2世、3世がSNSを駆使しながら新しい商品を作って繁盛させている。チェーン店の攻勢にぜひ抵抗してほしい・・。

 

土井善晴に似てるかわいいおじちゃんだなぁと思いながら観ていたが、なんとも憎めない人なんだろうな。いちばん割を食ってしまったかもしれない奥さんが気の毒。今このタイミングで鑑賞すると、アメリカはハングリーな移民たちが必死で働いて繁栄してきたことを思い出そうじゃないか、と問いかけられている気がした。現代にアメリカン・ドリームはもう存在しない、とも言えそうだけど。

 

東京では新宿武蔵野館1館のみの上映。もちろん観たあとにドーナツを食べに行った(クリスピー・クリーム)。すぐにドーナツ食べたくなるので、常時劇場で販売していたら買わない人はいないと思う。新宿のドーナツ店はチェーン店しかなさそうだったので、鑑賞後の割引サービスを取り付けられなかったのかな。単館上映の映画では価値がないと思われたのだろうか・・(新宿のクリスピー・クリームはTOHOシネマズにあるので無理か)。最近はミスドも店が減ってきてるらしく、日本のドーナツ業界は縮小してるのかしら。ダンキンは98年に日本から撤退している。ちなみに渋谷のTOHOシネマズが入ってるビル1階のクリスピー・クリームは、広くて穴場です。

 

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